研究課題/領域番号 |
19H01221
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
平 諭一郎 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10582819)
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研究分担者 |
薩摩 雅登 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80272657)
熊澤 弘 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20313314)
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
古川 聖 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40323761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 芸術 / 美術 / 保存 / 継承 / 同一性 / アーカイヴ |
研究実績の概要 |
本研究は、芸術作品における継承すべき核心を見定め、制作(つくる)―保存・修復(まもる)―展示・公開(みせる)―記録・アーカイヴ(しるす)する循環を通じて、芸術作品における真正性と同一性を定義し、その保存正否を表す臨界の存在を真に明らかにするものである。今年度は、研究期間全体における助走として(1)基礎的な研究の積み重ねと、集積された知見および考察内容を共有するための研究会の実施。(2)研究対象作品の選定および予備調査と制作準備。(3)翌年度に開催予定の研究成果発表展覧会の準備をおこなった。また、研究内で考察した内容の一部を、研究メンバーによる招待講演や論考にて一般に公開した。 (1)研究会:今年度は、表象文化、現代美術史、ミュージアムにおける美術作品管理、修復、音楽制作、生命美学を専門とする研究者やアーティストを講師に迎え、計4回の研究会を実施した。研究会ごとに参加メンバーを変えながら、それぞれの立場で意見を交わすことで、研究の方向性を補正していくことができている。 (2)対象作品:対象作品となる東京藝術大学大学美術館が収蔵する同学卒業制作の選定および予備調査を実施し、その作品形態や収蔵状況、指示や作家の意向を確認し、複製や移行を見据えた長期保存計画の策定を始めた。 (3)研究成果発表:成果発表の場として翌年度に開催予定である展覧会の基本情報と概要、趣旨を策定し、展示するインスタレーション、生物由来の細胞や生体高分子を媒体として用いたバイオメディア・アートを選定した。また、それら作品に関連する資料と、作家不在時でも再現可能な指示書の作成を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
芸術における真正性と同一性を考察するため、専門家を招聘した研究会を研究期間全体を通して継続的に実施する予定であり、今年度は、事前に予定していた通り計4回の研究会を実施した。さらに、翌年度に開催予定の研究成果発表展覧会の準備として対象作品の予備調査および指示書の作成に取り掛かり、おおむね順調に進展している。しかし、研究対象作品のひとつに選定したインタラクティブ・メディア・アートを所蔵するドイツ・ZKMでの事前調査が延期となり、研究計画を大幅に変更するとともに制作品、成果発表展覧会を再検討している。そのため、研究全体として考えると進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、状況を鑑みながらドイツ・ZKMが所蔵する対象作品(インタラクティブ・メディア・アート)の事前調査を実施する。さらに、インタラクティブ・アートやインスタレーション、バイオメディア・アート作品のなかで、指示書に従い、複製、模倣、移行、再制作が必要となる芸術の再現(再演)について、その再現手順や仕様、規定を考察する。その成果発表として、芸術の保存、継承における同一性を問う展覧会を実施する予定である。
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