研究課題/領域番号 |
19H01222
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
林 曉 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60279859)
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研究分担者 |
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
大氏 正嗣 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (70709716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 民俗文化財 / 修復 / 3Dスキャニング / CAD/CAM |
研究実績の概要 |
富山県内の曳山祭りに関する民俗文化財の保存修復にあたり、修理対象物の3Dスキャン並びにCADでの三次元データの書き出し、整理、を行い、修理委員会に於いて修理方針の具体的な提案を行った。2020年度の研究においては、3Dスキャナー、Artec Leoによる立体物のデータ採取、その後のCADソフトRhinocerosを用いたデータの整理、そのデータをもとにしたCAMソフトCraftMillでの切削データの制作、3D切削機Roland MDXによる木材加工という一連の作業の道筋と、有効性を現実の文化財修復を通して確認・実証することができた。修復における取組の流れとしては、文化庁調査官や県、市の文化財課の専門委員、各修理項目の専門家などで構成される委員会に本実施案を示し、了承を得た。その後、修理箇所に対して必要な形をCADを用いて造形し、CAMを用いて木材を削り出した。実測では大変手間がかかり、難しいと思われる修理品の内部形状を的確にとらえることができるので、修理部品の削り出しをほぼ正確に行うことができたと考えている。 本件は、国指定重要無形・有形民俗文化財の「高岡御車山 木舟町曳山の心柱に取り付ける「高花挿」と「下花挿」の修理に伴う部材の設計、製作を行ったものである。特に高花挿の修理にあたっては、構造物の内部形状を正確に把握する必要があったため、高性能の機器による3Dスキャンが必要で、これによって捉えられた三次元的な空間把握により、新たに設計し直す必要のあった木製部品の形状を的確にとらえることが出来たと思う。地域の木工職人さんと連携して対象となる部材の形や取り付けなどについて詳細に検討し、修理を行ったもので、2021年3月に所有者の木舟町に引き渡すことができ、町の方々にも満足していただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
科研に申請した内容で昨年度ほぼ必要とされる必要物品をそろえることができたので、関わりのあった民俗文化財の修復案件の中で、3Dデジタル技術の活用の機会が生じため、実際の現場で本研究に沿った修復技術を研究、実践することができ、その有効性を確認することができた。 また、今年度当初から富山大学芸術文化学部に付属する「文化財修復・新造形技術研究センター」通称「技藝院」を立ち上げてデジタル技術を活用した研究活動を積極的に行える環境を整え、地域の芸術文化に貢献する体制を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の実績を踏まえ、重要無形・有形民俗文化財(主に各地の祭り屋台とそれにまつわる道具類)の修理修復に3次元デジタル技術を活用しより効率的で精度の高い文化財修復に貢献できるように研究を前進させる。 具体的には、佐賀県唐津くんち一番曳山「赤獅子」の修復が来年度と再来年度を通して行われるので、この曳山全体を3次元スキャニングし、そのデータをもとに縮小モデルの制作を行う計画がある。 また、芸術文化学部に設置した「文化財修復・新造形技術研究センター」通称「技藝院」の規模を拡大し、本研究を広く大学全体の機能向上を図れるように、関係する教員、学生の研究を支援できるラボラトリーを設置する予定である。 他にも、3D技術を用いた美術館における展示のアシストや所蔵品のデータ保存、活用などの要請もあり、大学の研究、社会貢献として対応していく予定である。
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