研究課題/領域番号 |
19H01223
|
研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
北田 克己 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (50242251)
|
研究分担者 |
阪野 智啓 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (00713679)
吉村 佳洋 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (10336670)
早川 典子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (20311160)
半田 昌規 広島市立大学, 芸術学部, 研究員 (20538764)
宇高 健太郎 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (30704671)
荒井 経 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (60361739)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 膠 / 古典的膠 / 絵画材料 / 文化財修復材料 |
研究実績の概要 |
膠と膠文化に関する国際的な研究ネットワーク形成については、新型コロナ感染症拡大の影響を大きく受けたことから特に海外でのワークショップ開催は全面的に先延ばしとなった。膠に関する講演会によって情報を集積している膠文化研究会、諸大学、機関と合同で行ってきた公開研究会も対面による開催が困難だった。 上記の状況が長期化してきたことから、計画を見直し、研究成果の普及、公知化プログラムとして膠文化研究会から提供を受けた講演の音声データを文字データに起こし、広く共有できる資料の作成と編纂を行った。同時に、公開研究会のオンライン開催のための機材、システム整備を行った。また、絵画を中心とした膠技法、材料に関する多言語の基礎的資料が存在しないことから、新たに多言語テキストの執筆、翻訳に着手した。 2021年3月には姫路高木地区で古典的膠の製造復元に取り組む協力研究者のもとで、一般の参加者も加わる試作と実用化試験を行った。鹿の原皮は以前にエゾシカの使用もあったが内地、ニホンシカに限定して試作することとした。今年度は抽出のための恒温加熱装置を導入して製造工程、品質の安定化を図った。ここで試作した古典的膠は物性試験と試用の結果から鹿膠2番抽出、牛膠3番抽出を中心に画用に適しているとの結果を得ているが、他の製品も濃度の調整、混合調製などで利用を拡大できる。さらには画用に限らない実用の可能性が楽器分野や伝統工芸分野にあると見られ、そのために幅広い使用者、科学者とのネットワーク形成をさらに進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症蔓延のため海外での計画が全面的に実施先延ばしとなり、交渉継続さえ困難となった。そのため、国際的な研究ネットワーク形成については実績を残せなかった。そのため計画を変更して国内やリモートによる共同作業で実施可能な成果の還元を中心に進めた。以前の講演については演者による修正、加筆もあることから本年度より数年を要する計画だが、向こう2年で一部出版すること目指して概ね着実に作業が進んだ。 古典的膠の実用化試験では製造と材料試験、絵画制作での試用を組み合わせて製造の安定化と品質の確保を図っており、概ね希望の水準に近づいた。
|
今後の研究の推進方策 |
相手国の新型コロナ感染症の蔓延状態にもよるが、収束すれば国際研究ネットワーク形成のための交流、相手国でのワークショップ開催をまず進める。講演会や展示を含む公開研究会はオンライン開催の体制を整えたことから開催を再開する。 研究成果のアーカイブ、刊行に向けた作業を引き続き行う。また、膠技法材料の多言語対応資料の編纂を進めることとする。 姫路市高木地区での古典的膠製造復元、および実用化試験は安定製造のプロセスを確立し、品質確保に目途をつける。同時に使用者が現地で自製調達できる体制、プログラム作成とその定着を支援する。
|