研究課題/領域番号 |
19H01228
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00251752)
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研究分担者 |
久保 明教 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00723868)
神里 達博 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10508170)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テクノアニミズム / 人工知能(AI) / ロボット / 科学技術社会論 / 文化人類学 / アニミズム |
研究実績の概要 |
今年度の成果はおもに文献調査による理論的研究の進捗にあった。人とロボットを一枚の写真に収める際の構図の違いに注目した研究代表者の研究は、母子共同注視をもとにした共視論(北山修編『共視論』講談社、2005)を援用しつつ、対人関係に見られる社会的文化差が人=ロボット関係にも反映している可能性を実証的に示唆したものである。 このことは、人=ロボット関係に文化差が見られるのか見られないのかという一連の先行研究とは違った角度から社会におけるロボットのあり方を考察するための手がかりとなる。すなわち、「人=ロボット関係における文化」を問題にするのではなく、「文化あるいは社会における人=ロボット関係」を考察の対象とするべきであるという、問題設定そのものと枠組みの変換が必要であるという提言である。 テクノアニミズム的概念が人=ロボット関係の文化差の原因として機能しているのか、結果として表れているものなのかは当研究の当初からの課題であるが、人=ロボット関係以外にも類似の現象が見られることから、与件として扱って良いのではないか──少なくとも操作的にそのように扱うことの正当性が一定程度得られるのではないかとの見通しが得られたのも大きな進捗であった。 これらの知見を踏まえ、日本人におけるアニミズム的感性のアンケート調査を2021年3月22日実施した。各種動物に対する愛好度、動物の飼育経験、動物への接し方、メディアを介した動物との接触、キャラクターの愛好や認知、そして動物観および機械観についてのインターネットを利用した質問紙形式の調査である(N=1,057)。結果は現在まだ解析中であるが、日本人には一定のアニミズム的感性が見られることが再確認されたと同時に、ロボットに対してもアニミズム的感性が発露していること、しかしそれは動物に対するものとはパターンが異なることなどが確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗は当初の計画よりやや遅れている。その理由は新型コロナウイルス感染症の蔓延が続き、フィールドワークを中心とする実態調査が思うように実施できなかったからである。Zoomなどの遠隔通信によってインタビューをおこなったり、実地調査の頻度を下げておこなうなどの対応策をとることも検討したが、それによって得られる情報と、その準備・実施に費やす労力と時間を比較考量した結果、むしろ無理にフィールドワークを進めるのではなく、その代わりに文献調査に集中した方が研究効率が上がると判断した。 結果的にその判断は間違っていなかったと思う。Zoomなどの遠隔通信では初対面のインタビュー対象者から有益な情報を引き出すことは難しいからである。また、回数の少ないフィールド調査では偏ったデータしか収集できない危険性もある。 一方で文献調査とインターネット上で収集できるデータを使った研究や、インターネットを介しての質問紙調査を行うことができたので、「(4) 遅れている」ではなく「(3) やや遅れている」の評価が妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、今年度までの成果を踏まえて発展させるために、以下の3点を中心とする予定である。 第一に、テクノアニミズム概念の理論的な分析をさらに進展させる。すでに研究開始当初から明らかにされてきたように、テクノアニミズムはその曖昧さゆえに使用される文脈や使用者の意図によって都合よくいかようにも内実を修正できる概念であり、手放しで礼賛することは危険である。本研究でもネガティブな側面の方が大きいという指摘もなされており、ポジティブな要素を伸長するためにはさらなる理論的検討が必要である。 第二に、その理論的作業の拠り所となる実証的なデータを明確にするために、2021年3月におこなったアニミズムについての実態調査の結果の解析を進める。とくに、生物を対象とする場合とロボットを対象とする場合とで、どこが同じでどこが異なるのか、必要に応じて追加のインタビュー調査をおこないながら掘り下げる。これにより、アニミズムとテクノアニミズムを比較検討することが可能になり、両者の異同を実証的に輪郭づけることが可能になるはずである。 第三に、東アジア文化圏の中でのテクノアニミズムの実態と位置づけについての調査研究を進める作業をおこなう。新型コロナ感染症の拡大により東アジア諸国におけるテクノアニミズム概念の実態調査は見送ってきたが、諸状況が緩和されつつあるので、台湾と韓国における民俗学的研究を視野に入れつつ、比較調査のための準備作業をおこなう。 研究の進捗は定期的な情報交換会によって管理し、研究成果は論文・著書のほか、シンポジウムなどで公表する。
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