研究課題/領域番号 |
19H01228
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00251752)
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研究分担者 |
久保 明教 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00723868)
神里 達博 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10508170)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テクノアニミズム / ロボット / AI / 科学技術社会論 / 文化人類学 / ヒューマンインタフェイス |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度までの成果を踏まえて、実証的研究を進めるべく、アンケート調査をおこなった。テーマは「動物やキャラクターに関する意識調査」で、ウェブによる質問紙調査をインテージ社に委託した。調査は2021年3月22日におこなわれ、対象は日本在住の一般成人5,228人、うち有効回答数1,057であった。アンケートの実施は2020年度になるが、その解析は今年度の活動である。この調査は動物観全般を調査することも目的としており、各種動物に対する愛好度、動物の飼育経験、動物への接し方、メディアを介した動物との接触、キャラクターの愛好や認知、そして動物観および機械観についてたずねた。 詳細な結果は現在解析中であるが、とくにテクノアニミズムに関係する項目については、機械に対する感覚と動物に対する感覚の類似と相違が明らかになったのが興味深い。ロボットを生き物のように見るかという問いには肯定的な回答が多いものの、ではロボットと動物を同じように感じているかと聞かれると多くの回答者が「いいえ」と回答した。つまり、なんらかのアニミズム的感性は動物にもロボットなどの非生物にも感じるものの、その内実は異なる心的傾向を持っているのかもしれないことがうかがえた。また「石などの非生物に生命的なものを感じるか」という問いには3割以上が「わからない」と答えており、否定一辺倒ではない心性がうかがえる。この問いと「ロボットを蹴っても良いか」に対する回答とのクロス集計をとると、「石に生命を感じる」と回答した人が「ロボットを蹴っても良い」と回答する傾向も見られ、ここでもアニミズム的心性の「ねじれ」が見られた。 これらの結果はテクノアニミズムをめぐる理論的検討の複雑さを支持しており、今後、より慎重な分析が必要とされることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた韓国、台湾でのフィールド調査が、新型コロナ感染症による渡航制限のため十全におこなえない状況が続いているので、それらをおこなわずに日本国内の成人を対象としたアンケート調査を中心とすることにより、一定の進捗と成果を得ることができた。一方で、その結果の解析は遅れており、また当初予定していた文化比較研究も行えていないので、「当初の計画以上に」と評価するには至っていない。「(2) おおむね順調」と「(3) やや遅れている」の間で、(2) 寄りのところというのが正当な評価であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、引き続きテクノアニミズムに関する理論的・実証的研究を推進していく。今年度の調査により、ロボット/AIといった人工物・機械と、実際の生物と、非生物とが対象となった場合にはアニミズム的心性の発露が微妙に異なることが示唆されているので、今までの文化人類学や民族学におけるアニミズムに関する議論の蓄積とこれらの実証的成果の対応づけを注意深くおこなっていく予定である。
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