研究課題/領域番号 |
19H01232
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
浜田 雄介 成蹊大学, 文学部, 教授 (80238071)
|
研究分担者 |
石川 巧 立教大学, 文学部, 教授 (60253176)
山口 直孝 二松學舍大學, 文学部, 教授 (30297741)
小松 史生子 金城学院大学, 文学部, 教授 (60350948)
谷口 基 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20634075)
志賀 賢子 (川崎賢子) 立教大学, 文学部, 特任教授 (40628046)
金子 明雄 立教大学, 文学部, 教授 (70233872)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 探偵小説 / 原稿 |
研究実績の概要 |
【浜田】夢野久作の父杉山茂丸の書簡、渡辺啓助の1951年の日記につき、翻刻、紹介をした。また土屋文明記念文学館にて「探偵小説という文学」と題して講演し、江戸川乱歩、横溝正史、渡辺啓助、渡辺温の資料紹介を行った。【山口】横溝正史旧蔵資料(二松学舎大学所蔵)のうち、草稿、原稿類の整理とデジタルデータ化を進め、成果を『完本人形佐七捕物帳』に反映させた。国立国会図書館所蔵のアジア太平洋戦争下の地方紙の連載小説について調査した。【小松】高木彬光書簡(高木晶子氏蔵)、高木彬光草稿(青森近代文学館蔵)の調査、スキャン作業を行った。また江戸川乱歩旧宅跡記念碑建立実行委員会の委員として、行政および教育の各方面と折衝、メディアへの広報などを行い、「江戸川乱歩と名古屋展」(名古屋市政資料館)の準備と研究を行った。【谷口】山田風太郎直筆資料及び書簡類138点(山田風太郎記念館)のデジタル撮影・データ保存・目録作成を実施した。その成果の一部を口頭発表の後に論文化し、茂木謙之介氏篇『怪異とナショナリズム』(青弓社)に寄稿した。【川崎】とくに1920年以降の探偵小説ジャンルの変容について、戦前戦中戦後の連続性と断絶とに留意しながら研究を進めた。「松本清張におけるGHQ占領に関する表象と言説の総合研究」によって2019年度の松本清張研究奨励を受賞した。【金子】立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターで所蔵する江戸川乱歩関連資料を活用して、文学領域、大衆文化領域を幅広く視野に収めた研究を進めた。【全体】9月9日の会合では、二松学舎の横溝資料を見学するとともに、ポーランドの日本探偵小説研究者アンジェイ・シフィルコフスキ氏を交えて情報の交換を行った。また12月24日には新聞博物館の倉庫調査を行い、同時に雑誌『宝石』復刻計画について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【横溝正史資料】新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、次年度に予算を繰り越したが、山口により、横溝正史旧蔵資料の整理およびデジタルデータ化については、当初計画の約半分を進めることができ、地方紙の調査も国会図書館所蔵分について、一定の進展を見た。 【『新青年』作家資料】浜田による夢野久作の父杉山茂丸の書簡(成蹊大学所蔵)翻刻、渡辺啓助日記(渡辺東氏所蔵)翻刻については一部を雑誌掲載し、小栗虫太郎原稿(成蹊大学所蔵)については57331文字の文字起こしを行った。小松による青森近代文学館所蔵の高木彬光草稿のデジタル化は終了し、解読と分析にとりかかった。谷口による山田風太郎記念館の資料調査の成果の一部は河出書房新社からの申し出により、ムック『我らの山田風太郎 古今無双の天才』(2021)に掲載され、本事業の最終目的である「重要資料の公開」を補完するものとなった。同作業は重要資料の保存・分析意義のみならず、当地の教育委員会やマスコミからも注目を受け、結果として同記念館の存在意義を広く伝えるための一助ともなった。 【デジタル・アーカイブ関係】川崎が中心となり、概ね順調に進んでいる 【理論的研究】金子が中心となって数次の会合を持ち、探偵小説研究を文学史、文化史的視角と接合する理論的なパースペクティブの構築やそのような視野を生かした具体的な共同研究の展開について、基礎的な検討を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
【江戸川乱歩資料】『『探偵新聞』―占領期のカストリ・探偵小説関係新聞』(金沢文圃閣)および『カストリ雑誌総攬』(勉誠出版)を2021年中に刊行の見込みである。 【横溝正史資料】2020年度初めにおいて、二松学舎大学そのほかの図書館、文学館が利用できない状況であるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が収まり次第、資料調査そのほかの作業を再開する。利用可能な施設に応じて当初計画の順序を組み替え、研究を進めていく。 【『新青年』作家資料】浜田による小栗虫太郎資料、渡辺啓助資料に関しては、引き続き文字起こし作業を継続する。新型コロナウイルス感染拡大の影響が収まり次第、谷口は山田風太郎記念館における資料調査・デジタル撮影による保存作業を再開する。 【デジタル・アーカイブ関係】川崎はデジタル・アーカイブ、デジタル・ヒューマニティーズについての研究を蓄積する 【探偵小説全般、理論的研究】戦後占領期の探偵小説の動向に焦点を絞るかたちで、雑誌『宝石』を中心軸にして、探偵小説史、大衆文化史を記述する理論的枠組の構築を目指す。
|