研究課題/領域番号 |
19H01234
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
竹内 瑞穂 愛知淑徳大学, 文学部, 准教授 (00581224)
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研究分担者 |
坪井 秀人 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90197757)
一柳 廣孝 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (40247739)
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
小泉 晋一 共栄大学, 教育学部, 教授 (80296376)
光石 亜由美 奈良大学, 文学部, 教授 (90387887)
小松 史生子 金城学院大学, 文学部, 教授 (60350948)
大橋 崇行 東海学園大学, 人文学部, 准教授 (00708597)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中村古峡 / 日本近代文学 / 日本精神医学史 / 日本心理学史 / 異常心理 |
研究実績の概要 |
本研究は、中村古峡記念病院所蔵の中村古峡資料群の整理・データベース化を行い、その上で近代日本の〈異常心理〉を軸とした知的・人的ネットワークの実態と意義とを総合的に考究していくものである。 令和元年度は、年度初めに開催された研究会(5/26)で決定された方針に従い、中村古峡記念病院での現地調査と資料データの収集・整理を中心に行った。また、そこで得られた成果の一部を学会発表、書籍などのかたちで公開した。 竹内瑞穂、大橋崇行、安斉順子[研究協力者]、橋本明は、日本近代文学会・昭和文学会・社会文学会合同国際研究集会(11/24 二松學舍大学九段キャンパス)において、パネル発表「中村古峡資料群を読む―近代日本の〈異常心理〉文化の再考に向けて」を行った。竹内(「イントロダクション」)、大橋(「中村古峡記念病院所蔵資料調査について」)、安斉(「明治大正の心理学、催眠と中村古峡」)、橋本(「精神医療史からみた 臨床家・中村古峡」)の発表を通じて、文学・臨床心理学・精神医学の各領域における資料群の重要性を報告した。学会発表としては他に、竹内瑞穂の学際シンポジウム「近代日本を生きた「人々」の日記に向き合い、未来へ継承する」(9/29 明治学院大学白金校舎)での研究発表「自己を書く日記/自己を書く書簡―中村古峡史料群の研究プロジェクトより」や、安斉順子の心理学史研究会(2/29 法政大学市ヶ谷キャンパス )での研究発表「大正時代の精神病院調査―中村病院調査中間報告」がある。 また、書籍としては、心霊学からみる中村古峡像の分析を担当する一柳廣孝による『怪異の表象空間』(国書刊行会 2020/3)、戦後文化における〈異常心理〉言説の分析を担当する坪井秀人による『戦後日本文化再考』(三人社 2019/10 編著)、『戦後日本を読みかえる』3巻,4巻(臨川書店 2019/4)が刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「1、中村古峡資料群調査 」「2、古峡書簡類の写真撮影」「3、中村古峡資料群を用いた研究」「4、研究会の実施」を計画していた。 1については、予定していた日数(6日間)を超える7日間(8/21,22、10/17、2/20,21、3/5,6)をこなし、2の書簡類の撮影についても、予定していた全点撮影をほぼ終えることができている。ただ、実際に調査を進めるなかで、事前の調査の段階では確認できていなかった資料が多く見つかるなどしたため、資料群の全体像を把握するためにはまだしばらく現地での調査を重ねる必要があることがみえてきた。 3については、パネル発表を含む6本の発表と、研究分担者それぞれの課題に関わる研究業績があり、一定の進捗が認められる。しかし、調査の過程で資料群の全体像を再検討する必要が生じたこともあり、研究の段階としてはまだ端緒についたばかりだといえる。また、収集した画像データなどは付番・分類は行われたものの、その内容についての分析は一部分に留まっている。 4については、5月に研究会を実施し、前年度に竹内らが実施した予備調査の結果報告と、今年度の研究方針についての打ち合わせが行われた。当初の予定では、1月に研究発表のための研究会を開催することになっていたが、11月に日本近代文学会・昭和文学会・社会文学会合同国際研究集会でパネル発表を行うことになったため、そちらを研究会と兼ねることとした。 全体としては、ほぼ予定通りに研究を進めることができたといえる。だが、今後の研究の基礎となる資料群の調査および全体像の再検討については、いまだ不十分な点が残されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、「1、中村古峡資料群調査」「2、蔵書データベースの構築」「3、中村古峡資料群を用いた研究」「4、研究会の実施」を行う。 1については、中村古峡記念病院に所蔵されている各種資料の調査を、現地におもむいて行う。現在のところ、2日間の調査を2020年9月、2021年2月、3月の3回実施する予定であるが、対象が病院という新型コロナ感染を絶対に避けなければならない場所であること、また病院の資料保管場所が密閉空間に近いことを考慮する必要がある。状況によっては現地調査の中止、または必要最少人数での実施を検討する。また一部の資料については、貸し出しを依頼するなどの対応を考えている。2については、古峡旧蔵書のデータベース構築のため、蔵書の整理と書誌データの入力をすすめる。これは現地に行かなければ作業を進めることができないため、状況によっては次年度に延期する。3については、収集したデータや画像を用いて、分担者・協力者がそれぞれ担当するテーマに関する研究をすすめる。今年度は特に「療養日誌」と中村古峡診療所が刊行していた雑誌『黎明』の分析に重点を置く。「療養日誌」に関する研究については個人情報保護のため、現地に赴いて現物を扱う必要がある。こちらも状況によっては次年度に延期する。また、雑誌『黎明』については、貸し出しなどができないか所蔵する病院との調整を進めてみたい。4については、7月、9月、3月に本研究に関する研究会を実施する予定である。実際に対面での研究会ができるかどうかは不明瞭なため、オンライン会議システムを用いたWeb上での研究会ができないか検討中である。 なお、再度緊急事態宣言が発令されるなどした場合は、今年度は現在までに撮影した書簡類の分析と各自の課題に関する基礎的研究の推進、およびそれらを報告するWeb上での研究会に活動を限定せざるを得ないと考えている。
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