研究課題/領域番号 |
19H01234
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
竹内 瑞穂 愛知淑徳大学, 文学部, 教授 (00581224)
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研究分担者 |
大橋 崇行 成蹊大学, 文学部, 准教授 (00708597)
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
一柳 廣孝 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (40247739)
小松 史生子 金城学院大学, 文学部, 教授 (60350948)
小泉 晋一 共栄大学, 教育学部, 教授 (80296376)
坪井 秀人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90197757)
光石 亜由美 奈良大学, 文学部, 教授 (90387887)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中村古峡 / 日本近代文学 / 日本精神医学史 / 日本心理学史 / 異常心理 |
研究実績の概要 |
本研究は、中村古峡記念病院所蔵の中村古峡資料群の整理・データベース化を行い、その上で近代日本の〈異常心理〉を軸とした知的・人的ネットワークの実態と意義とを総合的に考究していくものである。 令和2年度は、前年度末から日本国内でも感染が確認されていた新型コロナウイルス感染症の流行が本格化し、本研究も非常に大きな制限を受けることになった。4月16日からの緊急事態宣言の発令以降は、それまでのように研究分担者が一箇所に集まって資料を整理するといった作業を進めることが困難となった。また、中村古峡記念病院が所蔵する資料を研究対象とする本研究にとって致命的だったのが、病院が感染予防のため外部者の立ち入りを禁止したことであった。当時の状況を鑑みるに、病院の判断は適切なものであったと考えられるが、これにより現地での資料調査を全て延期せざるを得ないことになった。 結果として、本研究は今年度の予定を変更し、研究分担者・協力者各自での資料データの分析が中心となったが、オンライン会議システム(zoom)を用いた研究会を9月、12月、3月に実施し情報交換に努めた。また、感染症が小康状態となった12月には、研究代表者1名で中村古峡記念病院へ赴き、今後の研究に関する打ち合わせと一部資料の借り出しを実施した。 なお、本年度の研究については新型コロナウイルス感染症による影響を理由とする「繰越」が認められ、令和3・4年度にも継続して実施された。「繰越」期間中も感染症の流行が継続していたため、当初の計画通りには進捗しなかったものの、そこで得られた成果の一部は、学会発表・講演2回、雑誌論文7本、図書(共著を含む)7冊などのかたちで公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は「1、中村古峡資料群調査 」「2、蔵書データベースの構築」「3、中村古峡資料群を用いた研究」「4、研究会の実施」を計画していた。 1については、新型コロナ感染症とそれによる緊急事態宣言の発令によって、本研究が対象とする資料群を所蔵する中村古峡記念病院への立ち入りができなくなったことで、予定していた調査をほとんど進めることができなかった。一方で、2020年12月には研究代表者が一部資料(院内で刊行されていた雑誌『黎明』等)を借り出すことができたため、それらについては全点撮影および分析を進めることができた。2については、令和元年度の段階までで収集できた分の蔵書の書誌データをいったんまとめ、大学共同利用機関法人人間文化研究機構「国文学研究資料館」に提供することになった。3については、令和元年度に資料撮影を終えていた書簡類と古峡日記、それに本年度撮影を行なった雑誌『黎明』の分析が行われた。ただし、資料群の現地調査や皆で顔を突き合わせながら資料の分析・検討するといったそれまでの作業が実施できなかったこともあり、研究グループ全体でというよりも研究分担者・協力者が各自の研究を進めることが中心となった。4については、次第にオンライン会議システム(zoom)の使用が一般化してきたこともあり、オンライン上で3回(2020年9月、12月、2021年3月)実施することができた。また、「繰越」期間中の2023年1月には、大正・昭和期の精神療法や民間宗教についての研究を進めてきた研究会から2名(石原深予氏、栗田英彦氏)のゲストを招き、研究情報の交換会を実施した。 全体としては、新型コロナ感染症の影響を強く受け、予定通りに研究を進めることは叶わなかった。その一方で、「繰越」を活用して状況の改善を待つことができたこともあり、完全に研究が停止するという最悪の事態については避けることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、以下の4点を実施する。 「1、中村古峡資料群調査」中村古峡記念病院に所蔵されている各種資料の調査を、現地におもむいて行う。2日間の調査を2021年9月、2021年2月の2回実施する予定である。その際には、参加日を分散させ、少人数で実施することとする。「2、蔵書データベースの拡充」古峡旧蔵書のデータベースは、まだその全てのデータが入力できていない。国文学資料館近代書誌データベースでの公開にむけて蔵書の整理と書誌データの入力をさらに進める。「3、中村古峡資料群を用いた研究」収集したデータや画像を用いて、分担者・協力者がそれぞれ担当するテーマに関する研究をすすめる。令和3年度は「療養日誌」と雑誌『黎明』の分析、中村古峡診療所の治療システム、同時代の異常心理言説との比較検討を進める。「4、研究会の実施」2021年6月、9月に本研究に関する研究会を研究代表者・竹内の主宰で実施する。3月にはこれまでの調査・分析を踏まえた公開シンポジウム(研究会)を実施する予定である。 なお、これらの予定については、新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、時期の後ろ倒しや実施内容の調整などを適宜行う。
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備考 |
その他の業績として、竹内瑞穂「【書評】堀井一摩著『国民国家と不気味なもの 日露戦後文学の〈うち〉なる他者像』」(『日本近代文学』103 2020 pp166-169)、長谷川昭弘・小泉晋一「【企画趣旨】ジュネに再び注目することの意義」(『催眠学研究』58 2020 pp25-26)がある。
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