近代イギリスにおける感受性文学と誤認―女性、言語、社会制度

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H01242
• 研究機関: 上智大学
• 研究代表者: 小川 公代 上智大学, 外国語学部, 教授 (50407376)
• 研究分担者: 川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 名誉教授 (30278387) ; 大石 和欣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50348380) ; 吉野 由利 学習院大学, 文学部, 教授 (70377050) ; 土井 良子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (80338566) ; 原田 範行 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90265778)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 教育 / 感受性 / 植民地 / チャリティ / 共感 / 怒り / 誤認

研究実績の概要

本課題では、道徳哲学、 政治経済学、美学、詩、文学批評といったさまざまな領域において18世紀イギリスの「感受性」（sensibility）を中心として、コミュニティや社会のあり方、植民地体制下の「他者」との関係にもつながるその関連言説を研究してきた。感受性は、ロマンスのジャンルにおける現実離れした空想世界、あるいは官能や欲望など堕落に繋がりうる退廃的な性質や不道徳性などを指し示すこともあるが、他方で、情動（affection）が道徳的判断の動因にもなりうる。この人間の美徳であるはずの感覚や感性に根ざした感受性が「誤認」 (misconception)を生み出す過程を医学や経験論、身体論を含めて多面的に分析し、その文化的、社会的、政治的意味と問題を、18世紀末から19世紀前半のイギリス文学、特に女性文学に焦点を当てて、解明してきた。各メンバーは、これらの過程をジェンダーや身体、教育、 植民地支配といった側面から明瞭にするべく、研究を行っている。具体的には、次の四つの問題意識を持ち研究をしてきた。(1)「誤認」が18世紀以来感覚や 感性に本質的な問題として認識されていったことがいかに「リアリズム」の成立に関わっているかという事実認識の揺れの問題、(2)「共感」、「慈愛」、 「愛情」という慈善行為がどのように宗教的、道徳的偏見などによって偏向されたか、他者に対する誤認あるいは認識・感覚の欠如が作家によっていかに言語化 されたかという社会・教育の問題、(3)「空想」や「想像力」といった文学的・芸術的美徳とも連動していた医科学言説がいかに社会制度や伝統の根幹とも地 続きであったかという身体的な問題、(4)文化的他者の表象が読者の「共感」と同時に「偏見」を喚起する可能性を孕む問題。

現在までの達成度 (段落)

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 翔ぶ女たちーー野上弥生子論 (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 群像 巻: 3月号 ページ: 27～52
• [雑誌論文] 『親切なクムジャさん』論――ケアの臨界点 (特集＝パク・チャヌク) (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: ユリイカ 巻: 3月号 ページ: 149～157
• [雑誌論文] 物語の効力と危うさの両方を「予言」する」鴻巣友季子『文学は予言する』(書評論文) (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 波 巻: 1/27発売号 ページ: 86～87
• [雑誌論文] サミュエル・ジョンソンの夢―ジェフリー・チョーサーとイギリス18世紀 (2023)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 雑誌名: 藝文研究 巻: 123巻3号 ページ: 42-55
• [雑誌論文] コメンタリ―イギリス文学研究から見える感情史の展望と課題― (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 女性とジェンダーの歴史 巻: 第10号 ページ: 26-28
• [雑誌論文] ロマン主義的政治思想?―ベンサム、マルサス、コウルリッジ― (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: イギリス哲学研究 巻: 第46号 ページ: 89-91
• [雑誌論文] 影」「響」という身体知 (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊剣窓 巻: 第499号 ページ: 2
• [雑誌論文] 私にとってフェミニズムとは（特集＝わたし／たちの声、詩、ジェンダー、フェミニズム） (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 現代詩手帖 巻: 8月号 ページ: 56～58
• [雑誌論文] 弱者の視点から見るーー暴力と共生の物語 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 小説 TRIPPER（トリッパー） 巻: 春号 ページ: 405～425
• [雑誌論文] SF的想像力が生み出すサバイバルの物語 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 小説 TRIPPER（トリッパー） 巻: 夏号 ページ: 421～441
• [雑誌論文] 〈有害な男らしさ〉に抗する文学を読む (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 小説 TRIPPER（トリッパー） 巻: 秋号 ページ: 197～219
• [雑誌論文] 死者の魂に思いを馳せるーー想像力のいつくしみ (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 小説 TRIPPER（トリッパー） 巻: 冬号 ページ: 229~251
• [雑誌論文] エリザベス女王――唇を噛み締めて (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 雑誌名: 群像 巻: 11月号 ページ: 256～263
• [雑誌論文] アヌス・ミラビリス（驚異の年）のイギリスが生み出すものは何か？ (2022)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 雑誌名: 図書新聞 巻: 3572号 ページ: 4
• [雑誌論文] 慈悲と共感の武士道 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第664号 ページ: 36-42
• [雑誌論文] 怒りと義憤と憎悪と (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第665号 ページ: 14-19
• [雑誌論文] 「拍子」あるいはリズムと間 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第666号 ページ: 14-21
• [雑誌論文] 道場という「間」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第667号 ページ: 24-30
• [雑誌論文] 時代小説に潜在する武道の心性 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第668号 ページ: 16-22
• [雑誌論文] 品格と威厳の難しさ (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第669号 ページ: 50-55
• [雑誌論文] 呼吸についての煩悩を釈明する（1） (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第670号 ページ: 16-20
• [雑誌論文] 呼吸についての煩悩を釈明する（2） (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第671号 ページ: 16-23
• [雑誌論文] 背骨と姿勢の力学的・文化的構造 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 雑誌名: 月刊武道 巻: 第672号 ページ: 24-32
• [学会発表] オーウェルと想像力 (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 学会等名: ジョージ・オーウェル生誕120 周年記念イベント「暗闇のなかの希望」
  • 招待講演
• [学会発表] Lafcadio Hearn and the Sea via English Romanticism (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 学会等名: English Literature and the Pacific
  • 招待講演
• [学会発表] アカデミック・ライティングから東大英語教育を展望する (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 学会等名: シンポジウム「東京大学の英語教育 － その現在と展望」
  • 招待講演
• [学会発表] インタビュー "The Reception of Coleridge and Xanadu in Japan" (2023)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 学会等名: BBC Radio 4
  • 招待講演
• [学会発表] ラドクリフ『ユドルフォ城の怪奇』と医科学言説――死者から生者へ (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 学会等名: 日本オースティン協会第15回
  • 招待講演
• [学会発表] ケア文学の誕生―交差するケアと倫理と英文学― (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川公代
  • 学会等名: 日本英文学会北海道支部 第67回大会
  • 招待講演
• [学会発表] 文学における親子離隔の表象 (2022)
  • 著者名/発表者名: 川津雅江
  • 学会等名: 日本ヴィクトリア朝文化研究学会第２2回大会
  • 招待講演
• [学会発表] ＜ポスト＞＜ウィズ＞コロナ時代の英語英米文学研究―デジタル・ヒューマニティーズに向けて (2022)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 学会等名: 日本英文学会第94回全国大会特別シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] 合同前後のアイルランドをめぐって―言語、ジェンダー、自然 (2022)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 学会等名: 第54回日本ジョンソン協会全国大会シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] 環境文学としてのジョージ・エリオット作品―家屋、小屋、風景 (2022)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 学会等名: 日本ジョージ・エリオット協会第25回全国大会特別講演
  • 招待講演
• [学会発表] 独立と環大西洋交流の諸相―Wielandを読む (2022)
  • 著者名/発表者名: 原田範行
  • 学会等名: 科研費研究会「間大陸的ゴシック―C・B・ブラウン再読」基調講演
  • 招待講演
• [学会発表] 合同前後のアイルランドをめぐって―言語、ジェンダー、自然 (2022)
  • 著者名/発表者名: 吉野由利
  • 学会等名: 第54回日本ジョンソン協会全国大会シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] 日常生活という遺産の継承 ― ナショナル・トラストのコテッジ保存と戦略 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 学会等名: 文化遺産信託研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 世紀末のコテッジと農村共同体 ― トマス・ハーディ小説における建築表象 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大石和欣
  • 学会等名: 第65回日本ハーディ協会大会
  • 招待講演
• [図書] ケアする惑星 (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川 公代
  • 総ページ数: 280
  • 出版者: 講談社
  • ISBN: 978-4065296820
• [図書] 感受性とジェンダー 〈共感〉の文化と近現代ヨーロッパ (2023)
  • 著者名/発表者名: 小川公代、吉野由利、河野哲也、森田直子、大河内昌、犬塚元、井上櫻子、川津雅江、土井良子、原田範行、大石和欣
  • 総ページ数: 308
  • 出版者: 水声社
  • ISBN: 978-4-8010-0713-0
• [図書] 啓蒙思想の百科事典 (2023)
  • 著者名/発表者名: 日本18世紀学会『啓蒙思想の事典』編集委員会
  • 総ページ数: 714
  • 出版者: 丸善出版
  • ISBN: 978-4-621-30785-4
• [図書] 暗闇のなかの希望 増補改訂版 (2023)
  • 著者名/発表者名: レベッカ・ソルニット、井上利男、東辻賢治郎、小川公代（解説）
  • 総ページ数: 336
  • 出版者: 筑摩書房
  • ISBN: 978-4480438270
• [図書] オースティンとエリオット (2023)
  • 著者名/発表者名: 惣谷美智子、新野緑、川津雅江、土井良子、永井容子、廣野由美子
  • 総ページ数: 250
  • 出版者: 春風社
  • ISBN: 978-4-86110-863-1
• [図書] 自然・風土・環境の英米文学 (2023)
  • 著者名/発表者名: 富士川義之、原田範行、道家英穂、上石実加子、吉野由起、藤巻明、江澤美月、兼武道子、山田美穂子、大渕利春、結城英雄、辻昌宏、松本朗、高岸冬詩、鈴木英明、岩田美喜、東雄一郎、梶原照子、川崎浩太郎、金澤淳子、西垣内磨留美、伊達雅彦、馬場聡、峯真依子、川村亜樹
  • 総ページ数: 464
  • 出版者: 金星堂
  • ISBN: 978-4764712164
• [図書] 書くことはレジスタンス 第二次世界大戦とイギリス女性作家たち (2023)
  • 著者名/発表者名: 河内恵子、麻生えりか、生駒夏美、遠藤不比人、松本朗、原田範行、秦邦生
  • 総ページ数: 256
  • 出版者: 音羽書房鶴見書店
  • ISBN: 978-4755304361
• [図書] Imperfectionist Aesthetics in Art and Everyday Life (2023)
  • 著者名/発表者名: Peter Cheyne, Andy Hamilton, Gordon Graham, Ted Gioia, David Wild, Lara Pearson, Karen lang, Eda Keskin, Kaz Oishi, Yasuo Kobayashi, Gregory Dunne, Fiona Tomkinson, Joseph S. O'Leary, Yuriko Saito, Thomas Docherty, James Kirway, Lucas Scripter, Laura Di Summa, Sherri Irgin, Cheryl Frazier, Glenn Parsons et al
  • 総ページ数: 412
  • 出版者: Routledge
  • ISBN: 978-1032170091
• [図書] 別冊ＮＨＫ１００分ｄｅ名著 パンデミックを超えて (2022)
  • 著者名/発表者名: 斎藤 幸平、小川 公代、栗原 康、高橋 源一郎
  • 総ページ数: 152
  • 出版者: NHK出版
  • ISBN: 978-4144072826
• [図書] 十八世紀イギリス文学研究 第７号 (2022)
  • 著者名/発表者名: 日本ジョンソン協会（服部典之、福本宰之、内田勝、Hiroki Kubota、川津雅江、原田範行、川田潤、三原穂、西山徹、金津和美、鈴木実佳、廣田美玲、吉田直希）
  • 総ページ数: 284
  • 出版者: 開拓社
  • ISBN: 978-4-7589-2372-9