研究課題/領域番号 |
19H01247
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
玉田 敦子 中部大学, 人文学部, 教授 (00434580)
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研究分担者 |
安藤 隆穂 中部大学, 中部高等学術研究所, 教授 (00126830)
石井 洋二郎 中部大学, 人文学部, 教授 (90134402)
深貝 保則 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00165242)
坂本 貴志 立教大学, 文学部, 教授 (10314783)
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
畠山 達 明治学院大学, 文学部, 准教授 (10600752)
三枝 大修 成城大学, 経済学部, 准教授 (80707662)
井関 麻帆 福岡大学, 人文学部, 講師 (70800986)
飯田 賢穂 新潟大学, 人文社会科学系, 日本学術振興会特別研究員 (90806663)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス文学 / ドイツ文学 / 思想史 / 啓蒙 / 18世紀 / 19世紀 / 近代 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
ヨーロッパに近代が生成する過程において、古典古代の表象は本質的な役割を果たしてきた。近代国家の成立のためには、まず17世紀から18世紀における「近代古代論争」において《近代》の優越を示す必要があった。また19世紀以降のヨーロッパにおいては帝国主義政策として顕現する国家間の覇権争いが激化し、各国がそれぞれ古代ローマ帝国の正統かつ正当な継承者であると証明しようとしていた。 本研究課題「近代国家の文化的アイデンティティ形成における古代表象の諸相」においては、「ヨーロッパにおける近代国家の成立において古代表象が果たした役割」について、①「18世紀から19世紀における国家アイデンティティの高揚と父権的家族の生成」、②「18世紀以降の西欧において、科学や技術の発展が文学における《近代》の生成に果たした貢献、そこにおける古代表象の活用」、③「近代社会における時代意識と歴史観による国家アイデンティティの形成」という3つのサブテーマを考察する。 (1)初年度の活動として、まず6月に中部大学において、第41回日本18世紀学会大会を開催し、分担者の安藤隆穂が共通論題I「思想史とジェンダー」を、また分担者の深貝保則と代表者の玉田が「《近代》の形成における古代表象の諸相」を組織した。(2)さらに7月にエジンバラ大学で開催された国際18世紀学会では代表者の玉田がフランス語圏の海外研究者3名と①に関するセッションを開催した。国際学会大会には、分担者の坂本貴志、隠岐さや香、飯田賢穂も参加した。(3)1月11日には、一橋講堂会館に代表者と分担者が参集する研究集会を開催し、各自の研究について報告をした。集会の後半には海外研究者も参加し、今後の具体的な活動について議論をした。(4)1月24日には、海外研究者2名を招聘し、本研究課題におけるフランス語圏での活動について、分担者以外の18世紀研究者も交えて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず第41回日本18世紀学会大会を中部大学にて開催し、共通論題I「思想史とジェンター」と共通論題II「《近代》の形成における古代表象の諸相」を組織した。共通論題Iでは水田洋氏、水田珠枝氏、渡辺浩氏を招き、①「18世紀から19世紀における国家アイデンティティの高揚と父権的家族の生成」のサブテーマについて考察を深めた。また共通論題IIでは「近代社会における時代意識と歴史観による国家アイデンティティの形成」に関して分担者の深貝保則と坂本貴志が報告をしたほか、川出良枝氏、青山昌史氏を招き、議論をおこなった。この大会には分担者全員が中部大学に参集し、本研究課題の今後の方針を確認した。 本研究課題は国際共同研究に重点を起き、成果発信の舞台を海外にも拡げることを目指している。このため7月にはエジンバラ大学で開催された国際18世紀学会において、代表者の玉田がソルボンヌ大学のCeline Spector、リール大学のGabrielle Radica、ジュネーヴ大学のMartin Rueffと共に①「18~19世紀における国家アイデンティティの高揚と父権的家族の生成」のサブテーマをめぐってLe statut et l'identite des femmes dans la philosophie des Lumieresという題目のセッションを開催した。さらに1月にはRadica氏を客員教授として1ヶ月間、横浜国立大学に招聘し、1月11日に本研究課題のメンバーが参集した研究集会等、複数の講演をいただいた。また、1月24日には別途招聘したRueff氏と共に早稲田大学にて、Le 18eme siecle et les Lumieres : l'Etat des etudes et des questionnementsという題目の研究集会を開催し、新たな国際共同研究の形を模索した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2023年にローマにおいてAntiquity and the Shaping of the Future in the Age of Enlightenmentというテーマのもとに開催される国際18世紀学会で最終成果を報告することを目指している。 1)来年度以降、まず、フランスの18世紀研究の専門研究雑誌において、本研究課題のテーマ「近代国家の生成における古典古代の表象」に関する特集号を刊行する。この特集号においては、研究代表者の玉田と、海外研究協力者のGabrielle Radica教授(フランス・リール大学)が編集責任者を務め、本研究課題の分担者、隠岐さや香教授をはじめとして、フランス、スイス、イタリア、ポーランド、チェコスロバキア等、複数の国の研究機関に所属する15名程度の研究者に執筆を依頼している。本研究課題においては、「近代社会における歴史ビジョン」研究、「近代の成立と自然科学」研究、「近代国家の成立と言語表象」研究、「近代家族の形成」研究といった多岐にわたる研究を目指しているため、特集号の刊行は、これらの点について、網羅的な問題提起となる。 2)フランス・リール大学古典研究センターにおいて、海外研究協力者のRadica氏とともに国際研究集会を開催する。本研究集会においては「近代国家の成立と言語表象」についての研究に焦点を絞り、18世紀から19世紀にかけての文化的ナショナリズムの形成について問題を提起する。研究分担者、海外研究協力者のCeline Spector(ソルボンヌ大学)、Gabrielle Radica(リール大学)、Martin Rueff(ジュネーヴ大学)という三人の18世紀フランス研究者のほか、国内外から若手研究者を募り、本研究課題について新たな可能性を探る予定である。
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