研究課題
本研究の目的は,動詞の位置が異なるタロコ語(VOS)・英語(SVO)・日本語(SOV)を対象に (i) 身体運動が事象認知のオンライン過程に影響を与えるか,(ii) 身体運動が事象認知の際の視点取得に影響を与えるか,(iii) 身体運動の事象認知・言語使用への影響があるとすれば,それは言語普遍的かという三つの問いの解決に挑むことにより,身体運動と認知プロセス・言語使用とのインタラクションの本質に多角的側面から迫ることを目的とする。2019年度は実験助手を雇用し,日本語母語話者を対象に言語理解・産出実験を複数実施し,身体運動が事象認知のオンライン過程に与える影響,ならびに視点取得と主体感の関係性を探った。それらの成果を日本心理学会の国内学会,またEuropean Society For Cognitive Psychology (ESCoP), Architectures and Mechanisms for Language Processing (AMLaP), Boston University Conference on Language Development (BUCLD), Austronesian Formal Linguistics Association (AFLA)を含む4件の主要国際学会にて研究発表を行い,国内外の研究者から有益なフィードバックを得た。さらに「タロコ語と日本語の比較から迫る身体運動・言語・認知の関係とその普遍性」について招待講演者として発表した。このほか,科研費によって導入した視線計測器の設置ならびに運用を行った。次年度以降には,科研費によって導入した力覚ディバイスを用いた実験を実施する予定であるため,試用運転の準備を始めた。また研究経過や研究成果を公開する場所としてウェブサイトを立ち上げた。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した実験内容を補足するための予備実験・派生実験を追加実施するなど、多少の変更があったが研究目的の達成に向けて着実にプロジェクトを進めている。次年度実施予定の実験に関しての準備・計画も進めているので、研究はおおむね順調に進展していると言える。
運動のタイミングや強度を試行間・実験間で統一することを可能にするため,力覚ディバイスを用いた実験の準備を進め,日本語母語話者を対象とした実験の実施を予定している。また,次年度の研究計画の中心である台湾のタロコ語を対象とした実験研究に関しては、台湾の研究協力者と緊密に連携しながら柔軟に推進していく予定である。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
Journal of East Asian Linguistics
巻: - ページ: -
doi.org/10.1007/s10831-019-09200-9
言語研究
巻: 156 ページ: 25~45
doi:10.11435/gengo.156.0_25