研究実績の概要 |
聞き手が音声のプロソディー情報から喚起すると想定される語彙とは異なる情報を用いた文(例文1b)を用い, 聞き手が話し手のプロソディー情報に信頼を置くという意味でのreliabilityを操作した. これにより,予測的処理におけるプロソディー情報への依存度がreliabilityによってどう変化し適応するのかを眼球運動計測実験により明らかにした. 具体的には, まず実験1で(1a)の音声文と同時に図1の絵をスクリーン上に提示し, ‘purple’に置かれた対比的アクセントから ‘cat’が予測されるか(‘cat’のオンセットよりも前に‘purple cat’への予測的注視が見られるか)を検証した. 実験2では, (1b)の音声文で‘purple cat’を予測することで‘pig’を聞いたときに処理負荷が生じるかを調べるとともに, 実験の進行に伴い実験内での特殊な対比的アクセントの使われ方に学習が起き, ‘purple pig’を予測するようになるかを検証した. (1a) Reliable-speaker: First, find the red cat. Next, find the PURPLEL+H* cat. (1b) Unreliable-speaker: First, find the red cat. Next, find the PURPLE L+H* pig. 英語母語話者と日本語を母語とする英語学習者を対象とした実験結果から, 母語話者と学習者両方のグループにおいて音声情報の違いによるの予測的効果が見られた. さらに, 母語話者と学習者では音声情報の中で使われる情報が異なることが明らかとなり, 母語話者が音声情報の韻律の変化に敏感である一方, 日本語を母語とする学習者はF0の高低のような音素の変化に敏感である可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定ではまず最初にフランス語話者を対象とした実験を行う予定であったが, 被験者が思うように集まらなかったためフランス語話者のデータ収集は完了していない. そのぶん, 来年度に予定していた英語母語話者と日本語を母語とする英語学習者にデータ収集を行い, 分析と解釈を終えることができたため, 計画はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降は, 実験のアイテムをフランス語訳した実験をフランス語母語話者に行い, 刺激録音の音声分析から, フランス語ではNoun+Adjの文型における対比表現でどのようなプロソディー情報が用いられるかを明らかにすると共に, 眼球運動計測実験からこのプロソディー情報が文理解で予測的なキューとして機能するかを検証する. そして, フランス語を母語とする英語学習者を対象に英語文の刺激を用っている実験のデータ収集を完了させる.
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