• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

第二言語の適応的な文理解とプロソディーの影響:眼球運動計測と数理モデルによる検証

研究課題

研究課題/領域番号 19H01279
研究機関早稲田大学

研究代表者

中村 智栄  早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (30726823)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードアイトラッキング / 音声 / プロソディー / 第二言語習得 / 心理言語学
研究実績の概要

聞き手が音声のプロソディー情報から喚起すると想定される語彙とは異なる情報を用いた文(下記の例文b)を用い, 聞き手が話し手のプロソディー情報に信頼を置くという意味でのreliabilityを操作した. これにより, 予測的処理におけるプロソディー情報への依存度がreliabilityによってどう変化し適応するのかについて被験者が音声を聞く際の視線の動きを計測するアイトラッキング実験から明らかにした. 具体的には, まず実験1で(a)の音声文と同時に音声上で言及される絵を含めたいくつかの例(紫の猫、赤い猫、オレンジのカニ、白い犬、等)をスクリーン上に提示し, ‘purple’に置かれた対比的アクセントから ‘cat’が予測されるか(‘cat’のオンセットよりも前に‘purple cat’への予測的注視が見られるか)を検証した. 実験2では, (b)の音声文で‘purple cat’を予測することで‘pig’を聞いたときに処理負荷が生じるかを調べるとともに, 実験の進行に伴い実験内での特殊な対比的アクセントの使われ方に学習が起き, ‘purple pig’を予測するようになるかを検証した.
(a) Reliable-speaker: First, find the red cat. Next, find the PURPLEL+H* cat.
(b) Unreliable-speaker: First, find the red cat. Next, find the PURPLE L+H* pig.
本実験について, 英語母語話者を対象とした実験は完了した一方, 日本語母語話者とフランス語母語話者についてはコロナ禍による対面実験制限により実験参加人数が限られた状態である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度中に日本語とフランス語を母語とする英語学習者を対象に実験を行う予定であったが, コロナ禍によるフランスへの渡航制限, また, 両国における対面実験制限により実験参加人数が限られた状態となった.

今後の研究の推進方策

日本語とフランス語を母語とする英語学習者を対象にした実験を完了させる. その上で, アイトラッキング実験の結果とコネクショニストモデルを用い, プロソディー情報に基づいた文構造解析数理モデルの構築により実験結果のシミュレーションを行う. これにより, 言語情報のバリエーションに言語処理機能がどう対応しているかを考慮に入れた第二言語処理モデルを提案する. 具体的には, プロソディーのラベリング記述法(ToBI)を用いることでプロソディー情報を記号として入力し, 数理モデルがプロソディー情報に応じて正しい構造を学習できるかを検証する. ある層の出力が遡って入力される再帰結合機能を持つRecurrent Neural Networkを用いることで, ”The boy will touch (%) the frog (%) with the flower.”のようにプロソディー境界の位置(%)により文構造解釈が変化する規則性をモデルに学ばせる. 次のステップとして, 実際の言語産出によるプロソディーコーパスデータと長配列の順序付けにおける規則性を効率的に獲得することができるディープラーニングを組み合わせ, 様々な種類のプロソディー情報を提供することがコーパス内の発話を正しく解析するモデルの能力にどう影響するかを明らかにする. 最終的に, ディープラーニング機能により訓練されたモデルを実際のアイトラッキングデータと比較して評価を行い, モデルにより実験全体のパターンと個人差が説明できるかを検証する. その中で, モデルに対して異なる言語のコーパスデータに基づいた訓練を行い, この結果からある言語の知識が他の言語の処理にどのように影響するかについての議論を試みる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] CELER: A 365-Participant Corpus of Eye Movements in L1 and L2 English Reading2022

    • 著者名/発表者名
      Berzak Yevgeni、Nakamura Chie、Smith Amelia、Weng Emily、Katz Boris、Flynn Suzanne、Levy Roger
    • 雑誌名

      Open Mind

      巻: - ページ: 1~10

    • DOI

      10.1162/opmi_a_00054

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] L2 Learners Do Not Ignore Verb’s Subcategorization Information in Real-Time Syntactic Processing2022

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Chie、Arai Manabu、Hirose Yuki、Flynn Suzanne
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fpsyg.2021.689137

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Integrating prosody in anticipatory language processing: how listeners adapt to unconventional prosodic cues2021

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Chie、Harris Jesse A.、Jun Sun-Ah
    • 雑誌名

      Language, Cognition and Neuroscience

      巻: - ページ: 1~24

    • DOI

      10.1080/23273798.2021.2010778

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] L2 processing of subject-verb agreement (SVA): They hear it but can't process it?2021

    • 著者名/発表者名
      Kiwako, I., Nakamura, C., Kylie, S., Traci, F., Thomas, N., Suzanne, F., Jongmin, J., & Bethany, F.
    • 学会等名
      Architectures and Mechanisms for Language Processing (AMLaP 2021)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi