本研究では、前置詞句付加の曖昧性を含む文理解におけるプロソディー境界の予測的効果と情報の信頼性の影響を明らかにした。実験1では、前置詞句の曖昧な文におけるプロソディー境界の予測的な役割を検証した。具体的には、"The boy will write to the panda with the crayon"のような統語的曖昧性を伴う文を用い、プロソディー境界の位置が文の解釈にどう影響するかを調査した。この実験から、プロソディー境界が文の処理において予測的なキューとして機能することが示された。また、実験2では、フィラー文を用いてプロソディー情報の信頼性を操作し、プロソディーが信頼できる場合とそうでない場合でターゲット文の文処理にプロソディー情報をどの程度利用するかを検証した。結果、プロソディーの信頼性が低い場合には、話者がプロソディー情報を文の構造分析に用いる程度が低下することが確認された。
さらに、実験では英語だけでなく、日本語とフランス語を母語とする学習者も対象に含め、第二言語の理解において母語のプロソディーがどのように影響するかも検証した。この部分の研究は、言語間の経験がどのように統計的情報として蓄積され、それが新たな言語習得にどう影響するかを明らかにするものである。また、実験内での短期的な統計的情報が即時に文構造処理に反映されるかどうかも調べた。
本研究は、プロソディー情報が言語理解において重要な予測的キューとして機能し、その信頼性が文理解のプロセスに影響を与えることを示す。また、第二言語学習者が母語及び第二言語の経験から蓄積された統計的情報をどのように利用するかの理解にも寄与する。
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