研究課題/領域番号 |
19H01296
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
森 暢平 成城大学, 文芸学部, 教授 (20407612)
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研究分担者 |
河西 秀哉 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20402810)
茂木 謙之介 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00825549)
舟橋 正真 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (20790968)
松居 宏枝 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (40837366)
加藤 祐介 成蹊大学, 文学部, 助教 (20848478)
瀬畑 源 龍谷大学, 法学部, 准教授 (10611618)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 立憲君主制 / 天皇制 / ドイツ帝政 / 日独関係 |
研究実績の概要 |
「日本史」の枠組みで検討されることが多かった立憲君主制研究を、ドイツの公文書館に所蔵される史料および日本の宮内公文書館の史料を中心に、比較研究することが本研究の目的であった。 初年度は夏に研究分担者の松居がドイツを1カ月訪問し、ドイツ外交文書館、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州立図書館などで、資料調査を実施した。その成果は、象徴天皇制研究会で同年、「近代日本の皇室制度の成立とローレンツ・フォン・シュタイン」として発表された。明治の皇室典範(以下、明治典範)に、ドイツ各諸邦の家憲の影響が強かったことを松居は明らかにした。 研究代表者の森は、ドイツにおける王室の婚姻規則がいかに明治典範に取り入れられているかなどを中心に、近代皇室の西洋化、近代化を包括的に分析した『近代皇室の社会史』を出版した。さらに、研究分担者の茂木は、「皇族」(天皇の周辺にあるもの)、「地域」(中央に対峙するもの)という2点に着眼しながら、幕末から平成まで、表象の集積体としての天皇制に迫る著書として『表象天皇制論講義』を世に問うた。 2020年3月に、研究代表者と分担者で、ドイツを中心とした各国公文書館で資料調査を実施する予定であった。しかし、世界的なコロナ感染症の流行のため延期となり、本研究は初年度から大きな見直しを迫られることになった。ドイツへの調査が当面行えないことに鑑み、調査のうち、ドイツでの資料から解明する部分を縮小せざるを得ない事態となった。 また、この年度は、天皇の代替わりのときと重なった。研究分担者たちは、これと併せ、明治以降の日本の皇室の西洋化、近代化を語る論文・著作を複数出している(「狂乱と共犯」「模索されてきた象徴天皇制像」「明仁天皇の象徴天皇観」『平成の天皇と戦後日本』など)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者(森)と研究分担者(河西、加藤)による欧州での調査が、予定していた2020年3月の直前に中止となった(コロナ感染症の世界的拡大のため)。欧州での調査は2020年度、2021年度も行えなかった。このため、次善の策として、19世紀末から20世紀までのドイツ帝政の研究を参照しながら、日本の天皇制の大衆化の研究を深めていく方針を、新たに掲げた。 ベルギーのルーベン・カトリック大学のマルティン・コールラウシュ教授が、ヴィルヘルム2世の時代のドイツ帝室の大衆化を論じたDer Monarch im Skandal(スキャンダルのなかの君主制)を参照しつつ、代表者、分担者が、皇室の大衆化、近代化の研究をそれぞれの観点から深めていくことを、当面、ドイツでの史料調査の代替措置とすることにした。2019年度の予算で、同書の翻訳は473ページのうち80ページほどが進んだ。 この翻訳を共有しながら、研究代表者、分担者は論文、研究発表、著作などの業績を重ねており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ルーベン・カトリック大学のマルティン・コールラウシュ教授と連絡を取り、日本での国際ワークショップ実施に向け、準備する。日本における他の君主制研究者(ブータン、タイなど)とも連携しながら、立憲君主制研究の比較の視点を広げていく。 以上の2点を新たな方策として掲げながら、日本の皇室が、西洋、ことにドイツのシステムの模倣、移転であったことを明らかにするというそもそもの目標を追究していく。
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