研究課題/領域番号 |
19H01297
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
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研究分担者 |
小嶋 芳孝 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員教授 (10410367)
八木 光則 岩手大学, 平泉文化研究センター, 客員教授 (00793473)
岩井 浩人 青山学院大学, 文学部, 准教授 (10582413)
右代 啓視 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30213416)
鈴木 琢也 北海道博物館, 研究部, 学芸主幹 (40342729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 防御性集落 / 要害内集落 / 交易と交流 / 須恵器・ガラス玉・鉄器 / 北の内海世界 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古代末期~中世成立期における日本北方の境界領域が、かつて日本列島各地に存在した多様な文化相とその相互関係を検討しうる重要な舞台であることを、北日本からサハリン、千島、大陸沿海地方に至る広大な北方世界を、総体として比較検討して明らかにすることである。その指標としては、集落を壕などで囲郭する防御的集落が共通して展開していることに主眼を置いている。今年度はこれまで存在は知られているものの、精密な調査が及んでいなかった岩手県内の様々な山間集落について、その実像を詳細に描き出すことに重点を置いた。対象としたのは暮坪遺跡、子飼沢遺跡、黒山の昔穴遺跡、外久保遺跡、長興寺遺跡等である。その性格についてはこれまで様々な見解が出されているものの、本科研チームによる踏査の結果として、遺跡相互の位置関係をも踏まえながら、その防御的性格が十分認められることを確認した。生業に規制された山間生活のための遺跡というよりはやはり防御的性格が濃厚である。また高地性集落の代表的なものとして、前年に踏査済みの千ケ窪Ⅰ・Ⅱ遺跡を選定し、高地性集落として初の「遺構くん」システムを利用しての精密なデジタル測量を実施し、その性格の分析のための基本的データを得ることが出来た。 また防御的集落の展開の背景に、北方世界特有の「交易と交流」という特徴がもたらす社会の展開が関わっていることを明らかにするために、前年に実施した北海道出土の須恵器の生産地を明らかにすべく、秋田各地の窯跡出土の須恵器を、北海道との比較のため北海道で用いたのと同じ分析器で成分データを得ることが出来た。現在、北海道と秋田の出土須恵器の相互の類似度を精密に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北日本の高地性集落との比較の対象として重要なサハリン所在の要害内集落について、ロシア極東~サハリン地方のコロナ感染状況の改善がまったくみられず、現地からの調査許可が下りない状態で、また交通機関の問題があって物理的にも現地入りができず、現地調査がまだ実現していない。しかしながらロシア沿海地方については前年に基礎的データを十分に得ており、また問題のサハリン地方についても既往の研究を詳細に整理して補っているところである。また逆に北日本の高地性集落について、踏査事例を増やすことができ、新しいデータや知見を得られている。社会情勢が変化してサハリン調査が実現すれば、そうした遅れを一気に回復できる準備は出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
一応、社会情勢の変化をまってロシア沿海地方、とくにアムール川流域の山城調査やサハリン所在の要害内集落を踏査し、北日本の防御性的集落ないし高地性集落との比較のための資料を用意する予定である。 万一、ロシア沿海地方~サハリン地方での踏査がすぐに実現しなくても、本科研チームメンバーが個別に有している過去のデータを、あらためて総合して比較検討のための資料を用意していけば、一定の成果は得られるものと思われる。 またその間に、北日本での新たな知見を蓄積できる見通しも立っている。当面はこれらの活動を続けていくことにする。
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