研究実績の概要 |
本研究は、2016年の熊本地震後に熊本大学へ移管された惣庄屋文書である古閑家文書(個人所有、熊本大学寄託予定、約20,000点)の総目録を作成し、永青文庫細川家文書・松井家文書など、熊本大学保管の「熊本藩関係貴重資料群」と総合的に解析するものである。この作業を通じ、近世大名領国における藩政の意思決定構造の全体像、および地域行政組織(組合村・大庄屋など)の活動実態を解明することを第一の目的とする。さらに、得られた成果を全国的な国持大名領などの事例と比較検討し、日本近世社会における意思決定構造・地域行政組織の共通性と固有性を検出することを第二の目的とする。 以上の目的のもと、2022年度の研究では、①古閑家文書の総合調査、②熊本藩領と幕府領・他藩領の地域行政組織に関する比較共同研究に取り組んだ。 ①では、科研費で雇用した学生アルバイトの助力を得て、古閑家文書の目録作成と目録調書のデータ化作業を行った。その結果、2,004点の目録を作成するとともに、3,055点の調書データの入力を完了し、5,036点分の近世文書の目録データが整うに至った。古閑家文書の基礎研究に基づく成果は、熊本大学永青文庫研究センター編『永青文庫 細川家文書 災害史料編』(吉川弘文館、2023年)や後掲するシンポジウム「道と川の近世領国地域社会」などに反映することができた。 ②では、東京・千葉・石川・岡山・島根・愛媛各県の研究者とともに、近世の地域行政組織に関する研究会を、2022年9月10日に熊本大学文学部で開催するとともに、共同研究の成果を総括するシンポジウム「道と川の近世領国地域社会」を、2023年3月4日に熊本大学くすのき会館で開催した。シンポジウムの内容は、永青文庫研究センターの研究紀要である『永青文庫研究』第7号(2024年3月刊行予定)に掲載予定である。
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