研究課題/領域番号 |
19H01316
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
塩谷 哲史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30570197)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒヴァ・ハン国 / 中央ユーラシア史 / 灌漑史 / 在来知 |
研究実績の概要 |
2021年度は、16-20世紀の中央ユーラシア史、および近世・近代の水利史に関する研究文献の収集に努めた。また可能な範囲で、現地で刊行された地方史、回想録の網羅的収集を継続した。ただし、イチャン・カラ博物館と協力した聞き取り調査やウズベキスタン等での文書館調査については未実施に終わった。 成果公表に関しては、ホラズム・オアシスの歴史に関して、和文1点(「19世紀中葉のヒヴァ=ロシア関係再考―シュクルッラー・アガのロシア、オスマン両帝国への派遣について―」)、英文1点(" The Association between the Descendants of Sufi Saint Sayyid Ata and the Khans of Khiva at the Beginning of the 19th Century")の査読論文を刊行することができた。また編著に1917年トルキスタンの水利権法に関する論文1点(「改革と水利」)を掲載できた。また学会報告で関連するものとして2件あったが、とりわけANGIS-JAPAN(アジア歴史地理情報学会)においては、中央アジアの水利の在来知に関する共同報告を行うことができた。 アジア経済研究所の植田暁研究員と協力のもと、同研究所において中央アジアの灌漑史に関する基礎理論研究会立ち上げの準備を行った。同研究会は2022年4月にスタートし、国内外で中央アジアの水利灌漑史に関心を持つ研究者をつなぐネットワークとして機能することが期待できるとともに、現地調査および収集した文献の研究結果をいかに水利史全般の文脈に位置づけるか、または日本との比較からいかなる観点を生み出せるかについて議論を深めることができるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査は新型コロナウイルス感染症が収束しない状況下で困難を極めているが、歴史史料の読解と考察にもとづく論文の公表および学会報告は順調に進めており、アジア経済研究所を起点とした研究会の組織を通じて中央アジアの水利灌漑に関心を持つ研究者たちのネットワークを構築しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
従来計画していた現地調査に代替する研究方法を確立する必要がある。第一には、新型コロナウイルス感染症拡大の過程で急速に進展したオンライン活用を応用し、研究者間の情報交換を促進することで、国内外の研究者をつなぐとともに、現地の研究者や農業組合、水利行政担当者との連絡関係を確立したい。第二に、研究蓄積があり、論点が多用な日本近世・近代の水利史の成果を活用し、中央アジアの水利史との比較を行うことで、後者に新たな研究の視点、さらには分野を開拓することである。オンラインの活用と比較研究を通じて、16~20世紀中央アジアの灌漑史研究に新たな成果と革新的視点をもたらしたい。
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