研究課題/領域番号 |
19H01322
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 淳 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50634375)
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研究分担者 |
赤坂 郁美 専修大学, 文学部, 教授 (40574140)
財城 真寿美 成蹊大学, 経済学部, 教授 (50534054)
長田 紀之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究員 (70717925)
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候 / 降水量 / 都市形成 |
研究実績の概要 |
塚原と太田は、8-9月にオランダ国立公文書館とライデン大学図書館で調査を行った。太田はバタヴィアの都市形成形成の歴史と農業・貿易統計に関する資料を収集し、塚原はアチェ戦争に従軍した艦船の資料を調査した。財城、赤坂、および研究協力者の笹本は、9月にオランダ王立気象局資料室でジャワの気象データを収集し分析・検討するとともに、同資料室の研究員と意見交換した。 9月にメンバー5名がオランダに集まった機会を利用して、2度のワークショップを開催した。オランダ王立気象局資料室を退職した研究者2名の参加を得て、多くのフィードバックを得た。 上記活動以外には、個別に昨年度および今年度収集した資料の分析を行った。太田はバタヴィア都市形成や蘭領東インドの農業・貿易における気候要因の影響を検討した。赤坂は19世紀末以降のフィリピンにおける気象データを解析し、異常気象の発生パターンを検討した。笹本はバタヴィアの水利対策が都市形成と衛生の改善に与えた影響を分析し、塚原は航海記録に残る気象情報の歴史気候学における有効性を検討した。長田は英領ビルマの植民地政庁資料を分析し、イギリス政庁の都市計画と衛生対策における気象要因を検討した。 これらの成果発表の場として、2020年3月19-20日に慶應義塾大学で国際ワークショップ “Climate and Urban/Rural Development in Colonial Southeast Asia” をハイブリッド形式で開催した。海外研究協力者のJ. ワレン、F. C. ウィリアムソンもオンラインで参加し、活発に意見交換した。 2020年3月に太田と赤坂が予定していた海外調査は、新型コロナウィルス感染の拡大によって実施できなかった。その後も感染が収まらなかったため、予定していた経費は今まで入手した資料の電子化に主に使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8-9月に行った海外調査は順調で、非常に興味深い資料を収集できた。調査中にオランダの専門家と意見交換できたことが非常に有用で、その後の調査を進める貴重なアドバイスを得られた。そのような進捗があったことから、3月には年度初めまで予定していなかった国際ワークショップを開催した。これは今までの研究成果を中間発表としてまとめる貴重な機会となった。海外研究協力者はオンラインでの参加となったが、国内外のメンバーが交流する上でも大きな意義があった。 ただし、3月に予定していた海外調査がコロナウィルス感染拡大のため実施できなかったことは痛手となった。特に赤坂は、9月のオランダでのワークショップを優先し、本来希望していたマニラでの調査を3月に先送りしていたため、今年度の資料収集ができなかった。赤坂は現在、昨年度までに収集した資料の分析を進め、調査に使えなかった経費をデータ電子化の外注に回すなどして効率的に研究を進めているが、今後新たな資料が必要になった段階での研究の進捗にはやや不安が残る。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトは海外調査によって資料を収集することがきわめて重要なので、コロナウィルス感染の状況が改善しない場合はその影響は免れない。今後は既にオンライン化されている資料の活用や、文書館に複写と送付を依頼するなどの方法を試すつもりである。一方で、既に収集した資料の活用精度を高めることも重要であり、そのためには異分野の研究者を含む専門家の意見を得るのが有効であることが、今までのワークショップや資料室での意見交換から確かめられた。今後は海外調査が可能になればすぐにそれを再開するが、調査に行けない状況が仮に続いても、部外のメンバーを招いたワークショップの開催や、オンライン開催される国際ワークショップへの参加などを通じて、本プロジェクトの中間成果を広く共有してフィードバックを得る努力を行う予定である。
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