研究課題/領域番号 |
19H01322
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 淳 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50634375)
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研究分担者 |
赤坂 郁美 専修大学, 文学部, 教授 (40574140)
財城 真寿美 成蹊大学, 経済学部, 教授 (50534054)
長田 紀之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究員 (70717925)
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東南アジア / 植民地期 / 降雨 / 台風 / 都市計画 |
研究実績の概要 |
2020年度は海外調査に出ることができずデータの収集に大きな困難があったが、分担者は過去に集めたデータを分析するなどしてそれぞれ研究を進展させた。財城はジャワの日降水量データを分析して、1901-1916年における降雨パターンの季節的特徴を解析した。特に少雨年であった1905年において、既存の全球グリッドデータを使用して事例解析を行うとともに、同データの信頼性を検討した。赤坂は、マニラの気象観測資料における多雨年、少雨年において、台風の襲来時期に関する情報を整理・分析した。その結果、それらの年における台風径路の特徴を明らかにできた。またAteneo de Manila大学図書館で得た新聞資料に天候情報が掲載されているのを確認し、データとしての利用可能性を検討した。同館所蔵の旱魃や洪水に関する調査報告からも貴重な気象データが得られることを確認した。研究協力者の笹本は、バタヴィアにおける雨季(1月~3月)の洪水の経年変化を1850年~1940年において確かめた。また、チリウン川流域の日降水量を確認し、洪水発生日が不明確だった記録を1879~1900年において見直した。さらに、上流での大雨による下流における洪水が明確な月降雨量と洪水の関係を明らかにした。加えてスマランにおける河川改修工事の内容や考え方の変遷を検討し、洪水の発生との関連を分析した。長田はラングーンにおける都市計画の展開を検討し、人口増に加えて低湿地という環境上の問題が都市計画において考慮される大きな要因となっていることを明らかにした。太田はバタヴィアにおけるマラリア流行に関する先行研究を収集して検討し、バタヴィアの降水量データと関連づけて分析可能であることを確認した。塚原は1860年代にアチェ周辺を公開したオランダ海軍船のログブックを分析し、貴重な気象データが得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた海外調査が実施できず、データを十分に収集出来なかったことが遅れの原因である。既に収集したデータの分析は深まったため、それによって発見できた課題の解決に向けて、今後はできる限り海外調査を行ってより広いデータを分析して研究を進展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
赤坂は、新聞資料および旱魃や洪水についての調査報告から気象情報を抽出し、データ化と降雨パターンの解析を進める。財城はジャワ島を中心に特異な年にフォーカスして、多雨や少雨の発生パターンを分析する。疫病の発生年に関して気候学的考察を進め、太田の研究と関連づける。研究協力者の笹本はバタヴィアの都市計画における洪水対策を分析し、財城の研究と結びつけて、降雨パターンがどのように洪水対策に用いられたかを検討する。太田はマラリアを流行させる要因として降雨パターンが当時から認識されていたかを、主に当時の疫病の専門家の残した文献から確認する。さらに財城と協力して、そのようなパターンがマラリアの拡大期と関連しているかを検討する。長田と塚原は、1891~1940年の日降水量データおよび1860年代オランダ海軍船ログブックの分析をそれぞれ進める。
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