研究課題
2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大のためほとんどのメンバーは海外調査ができず、2019年度までに収集したデータの分析を進めた。太田は勤務大学から海外調査の資格を得て、ライデン大学図書館やオランダ国立公文書館などで調査を進めた。9月にチェコのOmloucで開催された EuroSEAS でパネル発表を行い、研究分担者の財城、赤坂、塚原と太田が研究成果を報告して、多くの貴重なフィードバックを得た。その後は、各自がデータの分析と議論の整理を続けた。財城は、1901-1916年のジャワにおける降水量データの解析を進め、その期間にもっとも乾燥していたのは1905年であり、それは通常よりも低気圧システムが弱かったことに起因すると結論づけた。赤坂は19世紀末から20世紀初頭にマニラで観測された気候データを解析し、豪雨や旱魃が起きるパターンを明らかにした。太田は1917年のバタヴィアにおけるマラリア流行に関する報告書を分析し、最大の被害を出したマンガブサール地区では洪水で水たまりが出来たあとに雨がやみ気温が上がったことでボウフラが発生したことが流行の原因であったと結論づけた。塚原は1850年代以降のオランダ海軍全艦船の航海日誌に気候データが記載されていることを指摘し、これが19世紀の貴重な洋上における歴史気候データになり得ることを明らかにした。長田は、イラワディデルタにおいて、洪水が凶作に結びつくパターンがあることを明らかにした。研究協力者の笹本は、19世紀後半から20世紀初頭のバタヴィアおよびスマランにおける新聞記述を分析して、洪水を発生させる降水パターンと浸水地域を明らかにした。2022年3月にはオンラインで成果報告会を開催してメンバー全員が報告し、お互いの研究進捗を確認するとともに、今後さらに検討を進めたり改善したりすべき点をお互いに指摘した。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大により海外調査ができないことが大きい。各自が収集し分析しようと考えていたデータがまだ集められておらず、研究の進捗に遅れを作っている。もっとも今までに収集したデータの分析は当初予定より進めており、全体としての遅れはそれほど大きくない。
2022年度からは海外調査にも行きやすくなり、20年度と21年度に作った研究の遅れを取り戻せると考えている。まずは今までに収集が遅れているデータを集めていることに注力する予定である。
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Climate of the Past
巻: 18 ページ: 327~339
10.5194/cp-18-327-2022
Climatic Change
巻: 164 ページ: 1-19
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現代思想
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たぐい
巻: 1(4) ページ: 65-77
土木史研究講演集
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