研究課題/領域番号 |
19H01323
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
新免 康 中央大学, 文学部, 教授 (10235781)
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研究分担者 |
濱本 真実 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (00451782)
塩谷 哲史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30570197)
熊倉 潤 法政大学, 法学部, 准教授 (60826105)
海野 典子 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (30815759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タタール人 / 中央ユーラシア / ディアスポラ / 中央アジア / 新疆 / 社会文化変容 |
研究実績の概要 |
3年目の今年度においては、前年度に引き続き、19世紀後半~20世紀初頭におけるロシア領中央アジアから中国領新疆へのタタール人の移動・移住の基本状況、および20世紀半ばの中国領新疆からソ連領中央アジアへの移住の基本状況に関する検討を継続的に発展させるための作業を行った。その結果を踏まえた上で、移住により形成された中央ユーラシア各地のタタール人社会と元のムスリム諸民族の社会との具体的な関係性とそれにともなう社会・文化変容の実態について検討を加えた。具体的には以下の通りである。 ①新規の研究成果を含め先行研究の把握をさらに進めるとともに、メンバーの研究打合せで最新の研究動向に関する情報の交換、研究計画のすり合わせ等を実施した。②19世紀後半~20世紀初頭におけるタタール人の移動・移住および交易活動・知的活動の状況に関して、検討を深めた。③タタール語定期刊行物、タタール人の回想などから、移住先におけるタタール人の活動、政治面への関与等の実態を、移住先ムスリム社会との関連において考察を加えた。④20世紀半ばにおける新疆およびカザフスタンの政治的状況にまつわるタタール人の活動とその位置づけについて検討を加えた。 また、海外共同研究者のウスマーノヴァ教授やアレン・フランク教授などとの連絡関係をもとに、まとめの国際学術会議の準備作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移動・移住の基本的な状況に関する知見を踏まえつつ、移住先の各地域におけるタタール人の活動の実態とその政治・社会・文化教育面における意義についても把握できつつある。 ①清朝・ロシア帝国時代における、清朝領への新疆の移動・移住と、交易活動の実態に関する具体的な様相がかなり明らかになった。タタール語定期刊行物の諸記事からは、乗機のような交易活動も背景,ロシア領のボルガ・ウラル地域―中央アジアー新疆という、ユーラシアをまたぐ形で、各地のタタール人居住地区を拠点とするネットワークにもとづき、教育・思想面における知的な交流が広範に行われており、それはソ連時代・中華民国時代にかけて、中央アジアや新疆現地のムスリム社会においても顕著な影響を与えていた具体的な様相が明らかになりつつある。 ②ソ連時代の文書資料や新疆で刊行された現代ウイグル語による回想・記事等にもとづき、ソ連領中央アジア(とくにカザフスタン)や現代新疆における政治体制においてタタール人が担っていた役割、具体的な政治的活動の諸相について明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
19世紀後半~20世紀初頭におけるロシア領中央アジアから中国領新疆へのタタール人の移動・移住の具体的な様相と、その背景となるロシア帝国の諸政策、および20世紀における中国領新疆からソ連領中央アジアへの移住の基本状況とその政策的背景に関する研究成果を踏まえつつ、移住先の各地域におけるタタール人の活動の実態とその政治・社会・文化教育面における意義についての考察をさらに進め、本研究課題の成果のまとめにつなげる。 ①移住先の中央アジアと新疆に拠点を置いたタタール人の交易ネットワークと具体的な活動、教育文化活動を、当該諸地域におけるムスリム諸民族との関係性と社会・文化変容の文脈の中で検討を加え、進展させるとともに。 ②ソ連時代におけるカザフスタン-新疆間関係と関連諸政策を背景として、両地域間の移動も視野に入れつつ、カザフスタンと中華人民共和国におけるタタール人の政治的動向の具体相についてさらに明らかにする。 ③まとめの国際会議を開催することにより、本研究課題の総括を行うとともに、その国際的な発信を図る。
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