研究課題/領域番号 |
19H01324
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
西村 陽子 東洋大学, 文学部, 准教授 (70455195)
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研究分担者 |
北本 朝展 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (00300707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中央アジア / 歴史地理 / 黄文弼 / スヴェン・ヘディン / ルートマップ / Mappinning / 地名データベース |
研究実績の概要 |
2019年度は、デジタル史料批判の実践と研究基盤の構築の2つのフェーズで成果を得た。 <デジタル史料批判の実践> 2019年度は、既に部分的に入手していた中国側の考古学調査である第3次全国ジェネラルサーヴェイの報告書について、詳細な内容についての大部の正式報告書を入手しえたことにより、中国側調査の全貌をほぼ知ることができるようになった。また、協力関係にある北京大学中国古代史研究中心と新疆師範大学から提供されていた資料の中から、Sino-Swedish Expedition(西北科学考査団)の中国側隊員として参加していた黄文弼の手描き路線図(Route Mapping)、89日分を発見した。西北科学考査団は、スウェーデン側隊長のスヴェン・ヘディンの統轄下でCentral Asia Atlasという地図を作成していたが、従来の定説とは異なり、黄文弼もまた独自に地図を作成しており、その現物も残っていることが明らかになった。これにより、以後も協力して調査にあたることが決定した。また、Sino-Swedish Expeditionの報告書に含まれる地図について、「ヘディン地名データベース」を作成し、各地名について位置情報の附与を開始した。 <研究基盤の構築> 2019年度は、DCPを構成するツールのひとつであるMappinningの改良に取り組み、年度末に改良版をウェブサイトで公開した。今回の改良においては、メインの古地図(一枚)に加えて、サブの古地図(複数枚)を同時に表示できるようにした。ただし、Mappinningの主要な機能である古地図の誤差情報の登録などは、現在はメインの古地図に限定している。今後、取得したいデータやそのための操作性などを検討し、より扱いやすい形への改良を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、予定していたDCPプラットフォームのツールを作成し、良質なデータの収集への目処もつくなど、研究の要となる部分に十分な進捗があった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度末から海外渡航が極めて困難となった現状においては、海外調査の実施については慎重に判断せざるを得なくなった。そのため、状況が落ち着くまでの間は、以下の作業を行う。 <デジタル史料批判の実践>2019年度に入手した資料に基づき、基礎的なデータの構築に取り組む。1.[DCPへの入力データの整備]DCPプラットフォームに入力するために、現代中国における考古調査で調査されている遺跡の状況を、GISソフトウェア上で確認しつつ、入力すべきデータを決定する。2.[シルクロード探険隊調査に関するデータの整備]とくにSino-Swedish Expeditionのデータなど、もとの調査報告書のデータの扱いが困難なケースが判明している。探険隊史料の状況を見極めつつ、DCPに利用するデータの整備を進める。 この他にも、2019年度に発見した黄文弼作成の路線図について、出版に向けた共同研究をオンラインで開始する。 <研究基盤の構築>デジタル史料批判プラットフォーム(DCP)を改良を継続する。2019年度に現代のウェブ地図利用環境に合わせて構築したマッピニングの新バージョンいついて、複数地図の比較など研究に有用な機能を実装するために、どのような形に整えるのが有効か検討し、改良を進める。
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備考 |
Mappinningは改良版を公開した。 ヘディン地名データベースは作成中のデータを一部公開した。
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