2021年度~2022年度にかけては、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく残る中、海外における調査活動は断念せざるを得なかった。本科研は日本国内において活動する場合は「シルクロード遺跡データベース」の構築を進めることが成果の創出に繋がるため、2021年度は特に集中的に遺跡データベースの構築を進めた。 本科研におけるデータベースの構築は、研究成果を広く世界の研究者と共有するシルクロード研究の基礎的な研究基盤を立ち上げることを目指しており、2021年度は本科学研究費の支援によりデータ駆動型の遺跡照合のための情報基盤「シルクロード遺跡データベース」の構築を進め、2021年12月に一般公開した。このデータベースは人文学資料の公開に適したオープンソースソフトウェアOmeka Sを基盤としたもので、各種の情報をカード型にまとめ、カード単位で照合可能とすることで、複数のカードに書かれた情報を統合できる点が大きな特徴である。さらに、探険隊のオリジナル地図が閲覧できるだけでなく、「シルクロードデジタルマップ」において、地名集(gazetteer)の検索も提供しており、様々なデータを統合的に利用して遺跡照合に関する情報を入力できる段階まで構築が進んでいる。また、遺跡データベースに入力したデータは、オープンデータのライセンスを付与して一般に公開することで、研究コミュニティが幅広く再利用できるように配慮している。Omeka Sで新規開発した機能もスムーズに稼働しており、一部のオープンソース化も検討している。一方で、本科学研究費の支援による構築はシステムを考案した申請者らが入力することを前提に構築したものであり、国際的な学術情報基盤として稼働するには今一歩の改良が必要な部分が残されている。
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