研究課題/領域番号 |
19H01329
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小田原 琳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70466910)
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研究分担者 |
鈴木 珠美 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (20641236)
鈴木 鉄忠 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 講師 (20726046)
藤井 欣子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (30643168)
秦泉寺 友紀 和洋女子大学, 人文学部, 准教授 (60512192)
古川 高子 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90463926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 境界 / 国民 / 戦争 / 国民化 / 記憶 |
研究実績の概要 |
冷戦の終結とグローバル化の進展とともに、喫緊では感染症という現象のなかで、政治的秩序という観点において国境の重要性は逆説的に注目を浴びている。歴史叙述における国民国家という既存の単位も疑義に付され、空間を囲い込み有働を管理する「境界化」の権力、境界を超える「透過性」の条件に関する議論を歴史的に叙述することが求められている。本共同研究は、19-20世紀にかけて激しい境界変動を被ったアルペン・アドリア地域で、住民がどのように事態に対応し、どのように記憶を蓄積したか、そこにどのような力が働いたかを、ローカルおよびトランスローカルなレベルで明らかにすることを目的とする。 初年度である2019年度は、(1)参加メンバー間での問題設定と理論的枠組の共有、(2)個別の研究課題の確定と研究推進および共同研究としての成果の検討を重点的に推進し、また(3)国外研究者・グループとの協働のネットワークの模索を行なった。 (1)に関しては、2019年6月、9月および2020年2月に研究会を実施した。ここではとくに本研究で重視される概念である「境界化」および「透過性」について、社会学に由来する概念を歴史学に応用する問題について、具体例に基づいて集中的に議論することができた。これらの議論は研究代表者・分担者による複数の論文・口頭報告等個別の研究成果に十分に反映された((2))。(3)に関しては、以前から研究交流をこなっているBorut Klabjan (European University Institute)が編者となったアルペン・アドリア地域を対象とした論文集Borderlands of Memory: Adriatic and Central European Perspectives (Bern: Peter Lang, 2018)の書評会を実施し、編者と共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画をほぼ着実に実施することができた。理論的枠組については、個別の具体的研究と対照させるかたちで練り上げてゆく必要があるが、「境界化」の権力という観念について、近年の歴史学で重視されてきた内面化された倫理的な力の作用と同時に、具体的に住民の上に課される政治権力としての作用を軽視するべきではないことが明らかになった。このことが今後の研究にとって不可欠の認識として共有されたことは共同研究として重要な基盤を固めることにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
第二年次にあたる本年度は、新型感染症の影響により、海外調査を行うことが非常に厳しい状況である。このため、少なくとも上半期には、(1)参加メンバー間での理論的枠組みの共有と発展、および(2)個別の課題の、理論的枠組に応じた検討の2点が主要な研究活動となる。これは、Zoom等を活用したオンライン研究会によって実施されることとなるだろう(上半期2回を予定)。 下半期は、海外調査が可能になった場合はこれを実施する(イタリア、オーストリア)が、引き続き困難な場合は、(3)デジタル化史資料の活用も視野に入れて研究活動を進める。 予定されている学会等参加は、早稲田大学ナショナリズム・エスニシティ研究所(7月)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(9月)、ヴェネツィア大学(12月)、ライデン大学(時期未定)だが、いずれも新型感染症の影響により中止ないしオンラインによる実施になるかもしれない。 現地での調査を重視する本共同研究にとっては厳しい状況ではあるが、本共同研究の構想の背景ともなっているグローバル化時代における歴史学・歴史叙述の可能性を追求しつつ研究を進めたい。可能なかぎりで研究成果の公開をウェブサイトを通じて行う。
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