研究課題
本研究は、複雑な現生人類ホモ・サピエンスのアジア早期拡散プロセスを考古学的に同定する手法を開発し、それを用いて新たな早期拡散プロセスのシナリオ仮説を構築することを目的とする。従来の定説では現生人類の本格的なアジア拡散は、チベット北部を通る北回りルートでも、同南部を通る南回りルートでも6万年前以降とされていたが、最新の研究成果によれば、南回りルートではそれより早く開始されていた可能性(早期拡散)が強くなった。したがって新たな考古学的証拠の探索と同定が喫緊の課題となっている。本研究では、1)旧石器考古学だけではなく、遺伝人類学・自然人類学・生態人類学・民族考古学等の先行研究データの集成と分析を行い、2)往時の地形・地理・気候・動植物相等の古環境データとの比較検討を進めながら、3)アジア各地の代表的な考古学資料を実地調査して分析を加え、4)アジア早期拡散の総合的なシナリオ仮説の構築を目指す。研究初年度である令和元年度は、ロシア極東(9月)、タイ(10-11月)、中国南部(12月)、インド(12-1月)で現地・資料調査を行なった。またシンポジウム「Hunting: 狩猟相解明のためのアプローチ」(長野・11月)、北京原人頭骨発見90周年記念シンポジウム(北京・12月)、第21回北アジア調査研究報告会(九州大・2月)で研究成果の発表を行なった。比較資料調査として、北海道(5月)、岡山(2月)で資料調査を行なった。学生バイトを雇用して、関連資料の集成と分析に着手している。
2: おおむね順調に進展している
予定していた国・地域での現地調査はおおむね達成できた。データベース集成作業も順調に開始・実施されている。しかしながら2月以降世界規模で蔓延し始めたコロナウイルス感染症の影響により、2月後半から3月にかけての研究活動に支障が生じた。
引き続き研究計画活動を当初の予定通り遂行したいと考えている。しかしながら前年度末から始まったコロナウイルス感染症の国内および世界規模での蔓延は、令和2年度の研究計画の遂行、特に海外・国内現地調査にかなり支障が生じる可能性があるため、臨機応変に対応していきたい。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
東京大学考古学研究室紀要
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鈴木遺跡発掘調査総括報告書
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Antiquity
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https://doi.org/10.15184/aqy.2019.170