研究課題/領域番号 |
19H01337
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
河合 望 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (00460056)
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研究分担者 |
高橋 寿光 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (30506332)
柏木 裕之 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)
近藤 二郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70186849)
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (70333789)
覚張 隆史 金沢大学, 新学術創成研究機構, 特任助教 (70749530)
馬場 悠男 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (90049221)
阿部 善也 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 講師 (90635864)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古代エジプト / サッカラ遺跡 / 考古学 / ローマ支配期 / カタコンベ / 埋葬習慣 / 来世観 / 新王国時代 |
研究実績の概要 |
古代エジプト新王国時代の北の中心地であったメンフィスの墓地であるサッカラについては、その重要性にも関わらず、これまで網羅的な調査が実施されてこなかった。サッカラにおいて新王国時代の墓を新たに発見、調査することにより、これまで南の中心地テーベに偏重してきた新王国時代史の再構築が期待される。このような問題意識のもと、2015年度から科学研究費補助金・基盤研究(B)の助成を受け、踏査と試掘を行い、本科学研究費により本格的な発掘調査を開始した。 2019年度の調査は、8月から9月までの2ヶ月間実施した。調査地はサッカラ北部の台地の東側斜面であり、既に同年3月に調査を行った場所に隣接する部分である。2019年3月の調査にて岩窟墓の入口の一部が確認され、調査を実施したところ、当初想定していた新王国時代の岩窟墓ではなく、紀元後1世紀頃のローマ支配期のカタコンベ(地下集団墓地)」であることが判明した。 カタコンベは、日干レンガ製のヴォールト天井に覆われた長さ約9メートル、幅1.5メートルの下降階段と奥行き約15メートル、幅約2.5メートルの通廊の両側壁に合わせて5つの側室を持つ岩窟墓から構成されていた。これまでローマ支配期のカタコンベについては、地中海沿岸のギリシア・ローマ時代のエジプトの首都であるアレクサンドリアで知られていたが、ナイル川流域では初めての発見である。岩窟墓内部には数十体のミイラを含めた遺体がほぼ手付かずの状態で埋葬されていた。さらに、エジプトの神々とギリシア・ローマ風の人物が描かれたギリシア文字が掘られた石碑や、エジプトのイシス女神とギリシアのアフロディーテ女神が習合したイシス・アフロディーテ女神の像などが複数体出土した。 本調査による発見は、世界的に報道され、エジプトのローマ支配期の埋葬習慣や来世観を提供する重要な成果として学界に注目されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、サッカラ遺跡における新王国時代の岩窟墓の調査を目的としていたが、今年度発見された遺構は、ローマ支配期のカタコンベであった。このカタコンベの発見は、サッカラ遺跡で初めてのことであり、世界的な発見として学界から注目されているが、当初の目的の新王国時代の岩窟墓ではないので、研究の対象として考えた場合、おおむね順調に進展しているとした。2019年度の発掘調査では、付近に古代エジプト王朝時代の遺構も発見されたので、今後は当初の目的に合致する遺構の調査を目論みたい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の発掘調査によって、良好な考古学的情報を持ったローマ支配期の遺物を得ることができ、ローマ支配期のサッカラ・ネクロポリを知る上で重要な情報を得ることができた。今後、本調査区において更に発掘調査を進め、カタコンベの全容を解明する予定である。また、周囲には王朝時代の墓地の存在も確認されており、当初の目的である新王国時代の岩窟墓の発掘調査を進めていきたい。 さらにエジプト考古省と交渉を進め、現地におけるポータブル機器によるミイラのDNA解析を実施したいと考えている。
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備考 |
北サッカラ遺跡で発見したローマ支配期のカタコンベに関しては、各国で報道があった。また、発見の様子は、米国National Geographicに依頼された英国の番組制作会社の撮影クルーが撮影を行い、2020年に欧米を中心に各国でドキュメンタリー番組として配信される予定である。
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