研究課題/領域番号 |
19H01345
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
島田 和高 明治大学, 学術・社会連携部博物館事務室, 専任職員 (70398907)
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研究分担者 |
中村 由克 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (10737745)
眞島 英壽 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (60526804)
橋詰 潤 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (60593952)
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古環境 / 旧石器時代 / 最終氷期 / 黒曜石原産地分析 / 中部高地 |
研究実績の概要 |
2019年度の本科研費にもとづく主な研究テーマは(1)長野県南牧村に所在する矢出川湿原の古環境調査の実施、(2)携帯型蛍光X線分析装置(p-XRF)による黒曜石原産地分析、である。ほかに、安山岩原産地判別の新手法開発も実施した。また、2019年5月24日~6月1日の日程でInternational Obsidian Conference (IOC) 2019 Hungary(ハンガリー国立博物館主催)およびカルパチア山脈黒曜石原産地の巡検に参加し、海外研究者との情報交換と研究成果の口頭発表を行った。 (1)中部高地黒曜石原産地における3.0万年前をさかのぼる酸素同位体ステージ3の古植生と森林限界の高度を復元するため、2019年10月12~23日にかけて、矢出川湿原(長野県南牧村)を対象に、ロシアンサンプラーと機械ボーリングによるボーリング調査を実施した。今年度はコアの予備的な記載と有機物の年代測定を実施した。なお、現地でのボーリングを実施するにあたっては,南牧村教育委員会から多大な協力を頂いた。 (2)中部高地黒曜石原産地における旧石器時代人による黒曜石原石の獲得領域と行動系を復元するために、p-XRF(Burker製Tracer 5i)を導入した。今年度は、MURR(ミズーリ大研究原子炉施設)が作成した黒曜石元素分析用のプレインストール検量線のテストと、眞島・島田(2019)に記載した成分既知の基準試料を用いた独自検量線を試作した。今後、中部高地原産地から得られた旧石器石器群の大規模原産地分析を実施する予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)矢出川湿原(千曲川源流部)のボーリングによる古環境調査は、台風19号の直撃により日程に若干の変更が生じたものの、当初計画の地点、本数でコアを採取することができた。また,コアの放射性炭素年代測定も十分な試料点数について実施できた。ただし、得られた年代値はいずれも完新世であり、目的とした最終氷期の年代にさかのぼるコアは採取できず、目的達成に課題を残した。 (2)携帯型蛍光X線装置による黒曜石原石・遺物の元素組成分析については、プレインストール検量線のテストを行い、日本列島産黒曜石分析に一定の有効性が認められることを確かめた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2020年度以降に持ち越した課題は、中部高地の最終氷期植生復元に必要な花粉データの取得である。矢出川湿原(長野県南牧村)では、結果として最終氷期にさかのぼるコアが得られなかったため、2020年度には、矢出川湿原の周辺地域に所在する幾つかのボーリング候補地を検討し、追加のボーリング調査を実施する予定である。 (2)携帯型蛍光X線装置による遺物黒曜石の分析システムを構築する。そのために、波長分散型蛍光X線装置などですでに元素組成の定量値が明らかになっている地質黒曜石を携帯型蛍光X線装置で分析し、当該機器に固有の産地同定用基準値データベースを作る。この基準値データベースの遺物分析への有効性を確かめた後、当初計画にある最終氷期の人類活動を解明するための中部高地旧石器遺物の大量分析に取り掛かる。 なお、科学分析による産地同定を補完し、その精度をたかめるため、中部高地河川流域における黒曜石原石の堆積学的調査を継続して実施する。
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