研究課題/領域番号 |
19H01348
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
岩井 俊平 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10392549)
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研究分担者 |
入澤 崇 龍谷大学, 文学部, 教授 (10223356)
國下 多美樹 龍谷大学, 文学部, 教授 (30644083)
山内 和也 帝京大学, 付置研究所, 教授 (70370997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中央アジア / 仏教遺跡 / アク・ベシム / ソグド / トハーリスターン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中央アジアにおける仏教遺跡の地域間交流を具体的に示すことであり、2020年度は以下のような研究を行った。 1.チュー川流域および中央アジア各地の仏教遺跡の考古学的検討:昨年に引き続き、チュー川流域および中央アジア各地の仏教遺跡に関する情報を収集するため、発掘報告書や各種研究論文の精査を行った。本研究の主要な調査対象となるアク・ベシム遺跡の第2仏教寺院に関しては、ロシア語報告書の翻訳を継続するとともに、その具体的な建築方法や出土した彫像の様式的な研究に着手した。ウズベキスタンのカラ・テパ遺跡についても、昨年からの研究を継続して、建築様式の比較を行っている。すでに昨年の研究で強調した、中央アジアにおける顕著な特徴である「回字形祠堂」については、英文の論文でも公表した。 2.バーミヤーン遺跡の研究の継続:アフガニスタンのバーミヤーン遺跡やハッダ遺跡群については、昨年から継続的に研究を行っているが、特にバーミヤーン遺跡については、その年代について改めてデータの収集を行い、特に日本・ドイツが行っている放射性炭素年代測定の結果を比較研究している。また、フランス隊が発掘した地上寺院の伽藍配置やストゥーパの建築様式的特徴についての精査にも着手した。 3.現地調査の準備:2020年度に予定していたアク・ベシム遺跡第2仏教寺院址の発掘調査は、コロナウイルス感染症の流行に伴い中止せざるを得なかった。そのため、2021年度に改めて充実した調査が可能となるよう、1960年代の航空写真および最新の衛星画像の精査を進め、アク・ベシム遺跡内の建造物の分布や、周辺地域の地形の特徴などを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に予定していた研究の中で、現地アク・ベシム遺跡第2仏教寺院址の発掘調査が非常に大きな比重を占めていたものの、新型コロナウイルス感染症の流行が続いたため、発掘調査を中止せざるを得なかった。これに替わって、「研究実績の概要」にも記した中央アジアおよびアフガニスタン等の仏教寺院の報告書・研究の精査を重点的に進めているが、発掘結果との比較ができないため、全体の進捗はやや遅れている状況である。感染症の流行が収まらない限り、この状況を改善することは極めて難しいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度もコロナウイルス感染症の流行が継続したため、現地発掘調査ができなかった。今後こうした状況が改善された場合、できるだけ早く現地の発掘に取り掛かり、これまで国内で継続してきた中央アジア周辺の仏教寺院の伽藍配置の研究結果と比較していく。発掘対象である第2仏教寺院址において、ストゥーパあるいは僧房などの機能が明確な建物址が検出されれば、当該地域におけるガンダーラ仏教や中国西域の仏教の影響を考察することが可能となろう。一方で、感染症の状況が改善されない場合には、これまでと同様、中央アジア周辺の仏教遺跡の情報をさらに収集することになる。さらに、発掘対象のアク・ベシム遺跡については、最新の衛星画像の分析を継続して周辺地域の地形の分析を進め、「仏教遺跡の立地条件」という新たな視点の研究に着手するなど、一定の新軌道が必要になると考えられる。また、ゾロアスター教やネストリウス派キリスト教といった他宗教との影響関係についての情報収集を開始し、地域的な交流の検討を進めていくことも考慮に入れていくことになる。
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