研究課題/領域番号 |
19H01350
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
寺村 裕史 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (10455230)
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研究分担者 |
宇野 隆夫 帝塚山大学, 文学部, 客員教授 (70115799)
村上 智見 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 博士研究員 (70722362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 考古学 / シルクロード / 都市遺跡 / 東西交流 / ソグド人 |
研究実績の概要 |
本研究は、中央アジア・ウズベキスタン共和国を研究対象地域として、東西・南北交流の結節点としての古代シルクロード都市の果たした役割と、それらの都市を介して行われた人や文化の交流の実態を考古学的に明らかにすることを目的とする。その目的を達成するために、ウズベキスタン共和国科学アカデミー ヤフヨ・グロモフ考古学研究所と日本隊(国立民族学博物館・代表者寺村)との間でMOU(研究交流の覚書)を締結し、現地での調査準備を整え研究を遂行してきた。 今年度は、昨年度に引き続きCovid-19の感染拡大のためウズベキスタンへの渡航はできなかったが、現地研究機関および研究協力者の助力により、オンラインによる発掘状況の逐次の情報共有を行いながら、カフィル・カラ遺跡での発掘調査を実施することが可能となった。 具体的な調査成果としては、シャフリスタン(城壁内居住区)に設けた発掘調査区において2019年度に検出されていた大型の部屋遺構の発掘を継続し、部屋のおよその構造や規模が明らかになり、またその部屋の性格について考察するための遺物(壁画断片やガラス製品等)が出土するなどの貴重な成果が得られた。 また、シャフリスタンを取り巻く城壁の発掘調査も実施し、城壁の築造時期や断面構造を確認することができた。その結果、出土遺物や構造などから、この城壁が建設されたのは恐らく4~5世紀頃であると推定でき、6~8世紀には大規模な修復および増築がなされたことが明らかとなった。上記の部屋遺構や城壁の調査を通して、カフィル・カラ遺跡がどのようにして形成されたかを探り、都市の構造や成り立ちに関する考古学的な情報を得ることが可能となった。 こうした今年度の調査成果は、日本西アジア考古学会主催の『第29回 西アジア発掘調査報告会』において、協定先機関所属の研究者との連名で口頭発表をおこなうとともに、報告会報告集に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Covid-19の感染拡大のためウズベキスタンへの渡航はできなかったものの、現地研究機関と研究協力者の助力により発掘調査自体は実施することができたため、本研究の遂行に必要な新たな情報・調査成果を得ることが可能となり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、9月半ば~10月にかけて、現地(サマルカンド)のウズベキスタン科学アカデミー ヤフヨ・グロモフ考古学研究所と協働でカフィル・カラ遺跡の発掘調査を継続して実施する予定である。カフィル・カラ遺跡では、2021年度調査時にシャフリスタン(城壁内居住区)に設けた発掘調査区おいて、大型の部屋遺構のおよその構造や規模、そしてその性格について考察するための貴重な成果が得られた。しかし、まだ一部床面の遺構が埋もれた状態で残っているため、次年度はそれらの遺構の確認作業を継続する必要がある。そうした調査を実施することにより、カフィル・カラ遺跡がどのようにして形成されたかを探り、都市の構造や成り立ちに関する考古学的な情報を得ることが目的である。 また、シャフリスタンを取り巻く城壁の発掘調査を別の地点でも実施し、遺跡の性格を明らかにするための、新たなデータを取得する予定である。 さらには、2019年度に購入した遺跡周辺の衛星画像をもとに、発掘調査と並行して、衛星画像解析による遺跡周辺の地形情報の分析を実施する。次年度は最終年度であるため、発掘調査終了後の11月~翌年2月頃にかけては、日本国内において都市遺跡の立地場所と周辺環境をGISを用いて比較・統合するためのデータ分析作業をさらに推し進め、都市遺跡同士の位置関係やシルクロードとの関係性など、シルクロードを通じた人と文化の交流に関わる時空間的な分析を行い、これまでの調査成果を「発掘調査概要報告書」としてまとめるための編集作業に取り掛かる。 なお、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、もしウズベキスタンへの渡航が不可能な場合には、2021年度と同様に現地の研究協力機関や研究協力者の助力を仰ぎ、オンラインによる逐次の情報共有を行いながら、現地調査が実施可能な方策を検討する。
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