研究課題/領域番号 |
19H01354
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
国武 貞克 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (50511721)
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研究分担者 |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 初期後期旧石器時代(IUP) / 中央アジア / 日本列島 / 大型石刃 / 小石刃 / 尖頭形剥片 / 香坂山遺跡 / 放射性炭素年代測定 |
研究実績の概要 |
ユーラシア最古段階の石刃石器群と同様の石刃石器群が、日本列島において伝播した可能性について検討した。国内の既存調査成果を点検したところ、1997年に発掘調査されていた長野県香坂山遺跡にその可能性が認められることに気が付いた。そこで、遺跡が立地する八風山の尾根を踏査して、発掘調査をする地点を検討した。1997年長野県調査による調査区の西側で、山中には稀に見る広大な平坦面が広がっていることが分かったため、この平坦面で発掘調査を実施した。発掘調査は2020年8月の上旬に第1次、下旬に第2次、9月に第3次と分けて、約135㎡、7か所の調査区で実施した。その結果、第1次で小石刃が、第2次調査で尖頭形剥片と大型石刃、小石刃が、第3次調査で大型石刃と尖頭形剥片がまとまって出土した。尖頭形剥片は定義的な斜軸尖頭器である。この大型石刃、小石刃、尖頭器という石器の組み合わせはユーラシアにおける初期後期旧石器時代の石器組成と一致する。当初の見込み通り、ユーラシアと共通する石刃石器群が埋没していたことが判明した。さらにそ石刃製作技術についても、これまで日本列島で知られてきた小口面型の石刃製作技術に加えて、平面剥離型、立体剥離型も確認されて、よく共通することが分かった。この成果を論文としてまとめ、国内査読誌に投稿し受理された。また、出土炭化材の放射性炭素年代測定分析を実施した。発掘調査成果は205頁の発掘調査報告書にまとめて刊行した。れらの成果について、2021年6月に研究集会を実施して、発掘調査成果や火山灰分析や地形分析の結果について公表した。加えて出土した石器の全点を公開して見学会を実施し、その際に参加者に発掘調査報告書を配布した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ユーラシア大陸の石刃生産技術が日本列島にどのように到達したのかという日本旧石器研究における大きな課題について、本研究では大陸側の研究から手掛かりを得ることを目的としていた。しかし本年度の研究により、日本列島により大陸の初期後期旧石器時代(IUP)とよく共通する石刃石器群を発見することができた。これは本研究における中央アジアをはじめとするユーラシアの初期後期旧石器時代(IUP)の調査研究の成果に基づいて達成することができたもので、想定していた以上の大きな成果を得ることができた。このため、当初の計画以上に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年に発見した香坂山遺跡において、その遺跡の中心部を把握したため、遺跡の中心を広く発掘し、日本列島最古の石刃生産技術の全貌を解明する予定である。これに加えて、中央アジアで進めてきた初期後期旧石器時代(IUP)の遺跡であるタジキスタンのフッジ遺跡の出土石器の分析と整理作業をすすめ論文作成にとりかかる予定である。また、カザフスタン南部の後期旧石器時代前期(EUP)のクズルアウス2遺跡の発掘調査も行う予定である。
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