研究課題/領域番号 |
19H01354
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
国武 貞克 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (50511721)
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研究分担者 |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中央アジア / 初期後期旧石器時代(IUP) / 後期旧石器時代前期(EUP)) / カザフスタン / タジキスタン / 大型石刃 / 尖頭器 / 香坂山遺跡 |
研究実績の概要 |
当初予定していた中央アジアにおける野外調査を実施できなかったため、研究目的に沿って後期旧石器時代初頭の石刃石器群が埋没していることが2020年に判明した長野県香坂山遺跡において、2021年8月に第4次発掘調査を実施した。遺跡の中心部をほぼすべて発掘調査することができ、その結果、懸案となっていた大型石刃製作跡を発見することができた。また予想外にも大型石刃と尖頭形剥片のキャッシュや黒曜石のキャッシュも発見した。これに加えて、礫群も検出した。これらの成果からこの遺跡が、単なる石刃製作遺跡ではなく、拠点的な生活の場であることが判明した。日本列島最古の石刃製作跡が、標高1140mの高地において石材原産地に隣接した尾根上の平坦面に拠点が置かれた場において、形成されたことになる。これは本研究で追求してきた中央アジアをはじめユーラシアの初期後期旧石器時代遺跡の立地とよく共通することが判明し、非常に重要な成果が得られた。 その成果について、岩宿博物館において行われたシンポジウムにて発表し、報告書作成のための基礎整理を実施した。また2019年にタジキスタン南部において発掘調査を実施した初期後期旧石器時代のフッジ遺跡の発掘調査成果についてアジア旧石器協会(APA)第10回大会においてオンラインで発表した。またその成果をまとめた論文を執筆し国内査読誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中央アジアに渡航できなかったため、予定していたカザフスタンとタジキスタンでの発掘調査が実施できなかったが、同様の石器群が出土することが分かった長野県香坂山遺跡の第4次発掘調査を実施した。それにより、本研究の目的としていた中央アジアを中心にしたユーラシア大陸と日本列島の後期旧石器時代石器群の共通する構造について、当初予定していたよりも早くに重要な結論を得ることができた。このため、概ね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、タジキスタンにおいて2019年に実施したフッジ遺跡の出土石器の整理作業と分析研究を通じて、中央アジアにおける初期後期旧石器時代(IUP)石器群の内容を詳しく明らかにする。加えて、カザフスタンにおけるクズルアウス2遺跡の発掘調査を整理分析を通じて、中央アジアにおける後期旧石器時代前期(EUP)石器群の構造を詳しく明らかにする方針である。これにより、中央アジアにおける後期旧石器時代前半期の編年と石器群の構造を解明し、アルタイ山麓及び日本列島の最古の石刃石器群である香坂山遺跡と比較を行う。
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