研究課題/領域番号 |
19H01354
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
国武 貞克 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 主任研究員 (50511721)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中央アジア / 初期後期旧石器時代 / 後期旧石器時代前期 / 石刃石器群 / 香坂山遺跡 / 冠遺跡 / 発掘調査 / 年代測定 |
研究実績の概要 |
本研究課題の2020年、2021年の研究成果として、長野県香坂山遺跡を発掘調査し、中央アジアの初期後期旧石器時代(IUP期)とよく類似する日本列島最古の石刃石器群を発見した。令和5年度は、これと同様の列島最古の石刃石器群を、香坂山遺跡と同様に黒色ガラス質安山岩の原産地において探索するための野外調査を実施した。その結果、中国山地西部の分水嶺の広島県冠高原に所在する冠遺跡において、2010年前後に大型石刃が多量に採取されている地点があることが判明した。その地点を踏査し、地形と露頭断面から包含層の遺存状態を推定し、目的とする石器群が包含されている可能性が高いと判断して、発掘調査を実施した。その結果、複数の文化層を検出し、冠遺跡群では初めて層位的に石刃石器群を検出した。その後、木炭による放射性炭素年代測定分析や石英による光ルミネッセンス年代分析を実施し、これらの石器群の帰属時期や技術的な特徴について予備的な分析を進めた。新しいフィールドにおいて予想外にも当該研究に関連する重要な新資料を入手することができ、本研究課題の推進において大きな成果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
列島最古の石刃石器群である香坂山遺跡と対比可能な新しい石器群を、新しいフィールドで発掘調査により非常に良好なデータとともに入手することが出来た。これは当初の計画を大きく上回る成果であり、本研究課題の推進にとって非常に重要な成果を得た、。そのため、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年に発掘調査を実施したタジキスタンの初期後期旧石器時代(IUP期)のフッジ遺跡の整理作業と技術分析研究、及びその成果の論文化が最優先される課題であるため、これに取り組む。カザフスタン南部における後期旧石器時代前期(EUP期)の石刃技術の年代変遷をまとめ、タジキスタン及びカザフスタン東部のIUP期石器群との比較を進めて、中央アジアにおける後期旧石器時代の石刃石器群の成立プロセスについての試案をまとめる。あわせて、2023年に新しく入手した広島県冠遺跡の石刃石器群について、詳細な技術分析を進め、香坂山遺跡で把握した最古の石刃石器群との比較研究を進め、中央アジアにおける石刃石器群の成立と発展過程が、日本列島における後期旧石器時代最初頭の石刃石器群の成立にどのように関与していたのか試案をまとめる予定である。
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