研究課題/領域番号 |
19H01355
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
林 正憲 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (10360851)
|
研究分担者 |
清野 孝之 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (00290932)
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (20290934)
今井 晃樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 上席研究員 (60359445)
岩戸 晶子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50359444)
石田 由紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (40450936)
清野 陽一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10721269)
山口 欧志 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50508364)
中村 亜希子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60600799)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 瓦の同笵 / 3次元計測 / SfM-MVS |
研究実績の概要 |
本研究ではSfM-MVSの技術を導入し、平城宮・藤原宮出土瓦の基準資料の精密な計測を通じて、従来「同笵瓦」と認識されてきた資料の再検討をおこなうものである。将来的には、計測データを内外の研究者らに公開し、3次元データを用いた研究が、主要な研究手法の一つとなることを目指している。 初年度となる2019年度は、やみくもに全ての型式を網羅的に計測するのではなく、研究の俎上に乗せやすい型式を予め選別し、それらを優先的に計測し、次年度以降に行う分析のためのデータを得ることを目標とした。具体的な型式として氏は、平城宮第一次大極殿院所用瓦である6284-6664型式や、平城宮第二次大極殿及び東区朝堂院地区で多用される6225-6663型式、平城宮内で最も出土する6282-6721型式、東大寺式軒瓦の派生型式等である。結果。科学研究費獲得以前より計測していた点数を含めると、今年度までに約400点を3次元計測することができた。これは全体目標の3分の1に相当することから、進捗状況としては順調に進展しているといえる。 それと併行しながら、計測手法の確立に向けて様々な状況下での計測実験もおこなった。特に、予め設営したスタジオでの撮影による計測だけでなく、遠隔地に赴いての撮影及び計測を行うための設備や手法においても、様々な検討を行った。また、分析ソフトであるMetashapeが年度中に大幅にアップデートされ、それによって新たな分析手法について再度検討する余地が出てきたため、アップデート以前のデータとアップデート後のデータの比較検討を行っているところである。 以上のように、今年度は基礎的な計測作業に終始したため、これらの研究成果については発表することができなかった。そのため、次年度以降は分析結果に関して、積極的に発表を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、軒瓦の計測は人員1名で行っており、これでは研究目標の到達まで相当の時間がかかると見込まれたことから、科学研究費獲得以降は、さらに2名の人員を雇用して、計測作業のスピードアップを図る予定であった。しかしながら、計測及び分析作業の適正等もあり、思うような人材を確保することが難しく、結果的に1名しか雇用できなかったため、作業の進捗が遅れる可能性があった。 ところが今年度末の段階では、科研採択以前より計測していた点数を含め、今年度までに約400点を3次元計測することができた。これは全体目標の3分の1に相当し、3年計画の初年度としては充分な計測数を得るることができたといえる。このことから、残りの2年で概ね平城京・藤原京出土の軒瓦型式の全点を計測することが可能と推測される。 また、先述の雇用状況により、予算に余剰が生じたことから、2020年度に購入予定であったワークステーション1台について、2019年度中に導入することとした。ワークステーションの本格稼働は2020年度からとなるが、導入以降は計測作業と分析の迅速化がさらに進展するものと思われる。 ただし、今年度得られた計測データを考古学的研究に応用する研究に関しては、進展が遅れている。理由は2つあり、1つは今年度は基礎的な計測データを集めることに力点を置いていたためである。応用研究を可能にするためには、これらの基礎データの充分な蓄積があってこそと言えるので、次年度以降に応用研究を積極的に進めていきたい。2つめは、解析ソフトが年度途中でバージョンアップし、それに伴って3次元計測方法及び解析方法に大きな変更を生じたためである。ただし、これに関しては現時点でほぼ問題点は解消しているが、以前に計測したデータの再検討が一部残っている。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況の項目でも一部触れたが、2020年度以降は、継続的に平城京・藤原京出土軒瓦の計測を進めると共に、今年度計測したデータを元に、同笵の認定や笵傷の進行等、考古学的観点における分析を行う予定である。特に、軒丸瓦に関しては既にある程度の研究成果を得ているところであるが、軒平瓦についてはあまり分析・検討が進んでいないため、まずは東大寺式軒平瓦と藤原宮式軒平瓦について、製作技法と瓦笵の関係について、より踏み込んだ研究を進める予定である。 また、現在は作業とデータの簡便化という観点から、軒瓦の瓦当面のみを3次元計測しているが、軒瓦全体の3次元計測及び分析を行う予定である。具体的には、道具瓦である鬼瓦や隅木蓋瓦など、比較的立体としては単純な構造をもつものの3次元計測及び分析を行い、広汎な計測手法の確立を目指す。 さらには、これまでは研究室内における固定的な機材を使用した3次元計測のみを行ってきたが、比較検討を行うべき軒瓦が県外各地域にも存在しており、それらのデータが不可欠となっている。そこで、遠隔地において他機関の所有する軒瓦の3次元計測を行うために、簡易かつ迅速な計測が行えるような機材や設備を導入するとともに、測定方法そのもの開発を行う予定である。 以上の作業を行うに当たっては、やはり充分な人員が必要となるが、昨年度に人員確保の準備を進めていたため、今年度は全体で3名の人員確保が可能となる予定である。ただし、4~5月においては新型コロナウイルスの影響で計測作業がストップしていたため、その遅れを取り戻すための方策を現在策定しているところである。
|