研究課題
礼文島浜中2遺跡から出土したオホーツク文化終末期の人骨から取得した高精度のゲノムデータに基づく集団遺伝学的解析の成果を論文にまとめ、Molecular Biology and Evolution (MBE)に投稿したが、古代DNA分子の断片長がこれまで報告されているものと比較して極端に長かったことから、現生DNAの混入と判断されたためリジェクトとなった。査読者に指摘された懸念とその払拭のための追加解析を行い、現生DNAの混入ではないことを示した上でMBEの編集委員会に対し異議申し立てを行ったが、再投稿は認められなかったため、姉妹誌のGenome Biology and Evolutionに論文を投稿した。査読結果はMajor Revisionであったため、査読者に求められた追加解析を行い、改訂稿を投稿した。現在、再査読中である。当該年度に予定していた新規の古人骨資料の収集については、新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延に伴い、予定されていた礼文島浜中2遺跡における発掘調査が中止となったため、実施できなかった。ロシア‐モンゴル国境付近の遺跡から出土した匈奴期の個体から取得したDNAについてショットガンシーケンスを行った。マップ率は1.2%であったため、ディープシーケンスは困難と判断し、low-coverageデータでの解析を検討中である。モンゴルからロシアのバイカル湖周辺に至る地域の古人骨ゲノムに関する報告は、近年急速に増えており、比較に用いる公開データは豊富に存在する。これらについても大部分は既にデータ収集を終えている。
3: やや遅れている
本研究で分析したDNA試料に、既報の古代DNA分子と比較して著しく長いDNA分子が含まれていた点について、古代DNA特有のダメージパターンの存在やコンタミネーション率が低いことを示すことによって、現生DNAの混入ではないことを示すことができると考えていたが、査読者の指摘が当初の想定より厳しく、当該年度はその懸念を払拭するための追加解析に追われる結果となった。また、新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延により、予定していた資料収集活動が実施不可能になった。
新型コロナウイルスCOVID-19感染症収束の目処が未だに立たない現状を踏まえ、これ以上の新規資料の収集については一度断念し、既に収集済みの資料に焦点を絞って分析を進めるように方針を変更する。オホーツク文化初期の人骨から回収したDNAについては、次世代シーケンシング用ライブラリーを調整したが、既に分析済みの資料と同様に長いDNA断片がかなりの割合で含まれていたため、まずはサイズセレクションを行って通常の古代DNAと同等の断片長をもつ分子に限定して分析を進めることとする。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Communications Biology
巻: 3 ページ: 6711
10.1038/s42003-020-01162-2
Journal of Human Genetics
巻: 65 ページ: 683-691
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