研究課題
礼文島浜中2遺跡から出土したオホーツク文化初期(5世紀頃)の人骨(NAT004)から抽出したDNAについてショットガンシーケンスを実施した。内在性DNA含有率は人骨の保存状態の良さに反して低く、最終的な平均深度は0.98×であった。mtDNAハプログループはD4m2aであった。取得できたデータがローカバレッジであったため、pseudohaplotypeをコールして集団遺伝学的解析を行った。主成分分析では、本個体は、同遺跡のオホーツク文化終末期(12世紀頃)の人骨(NAT002)のゲノムに比べて、縄文人的遺伝要素をより多くもつことを示唆する位置にプロットされた。Dテストにおいても同様のシグナルが得られた。qpAdmによる混合モデリングでは、NAT004は縄文祖先要素とカムチャツカ祖先要素の混合個体としてモデル化することができ、縄文・カムチャツカ・アムール3系統の祖先要素の混合としてモデル化されたNAT002とは異なる祖先要素割合を示した。NAT004は、NAT002のlocal ancestry tract長に基づく混合年代推定によると、ちょうどアムール盆地からの移住が起きた頃に相当する時代の個体である。これらのことから、NAT004はアムール盆地からの遺伝子流動をまだ受けていない個体であり、NAT002のゲノムから示唆されていた、アムール盆地からの移住が起きる前の北海道北部周辺地域における縄文祖先要素とカムチャツカ祖先要素の2系統の混合集団の存在を直接確認することができた。この結果は、続縄文時代人の地理的多様性について、従来よりきめ細やかな検討が必要であることを示唆する重要な成果と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延により、予定していた資料収集活動が実施困難になったことで研究開始当初の計画より遅れている部分もあるものの、NAT004のゲノムからは予想していたよりも興味深い分析結果が得られたため、総合的に考えて、おおむね順調に進展していると判断した。
新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延により停止していた新規資料収集活動を再開できる目処が立ってきたため、研究期間中にできる限りの資料収集に努めるとともに、現時点でデータを取得できている個体についてさらなる集団遺伝学的解析を進める。NAT004のゲノムについては、deep sequencingを実施してハイカバレッジデータを取得することを目指していたが、内在性DNA含有率が想定していたよりもずっと低かったため、ハイカバレッジデータ取得は現実的ではないと判断し。ローカバレッジデータを用いた集団遺伝学的解析に方針を切り替える。
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