研究計画最終年度にあたる本年度は、これまでに実施してきた調査研究を総括し、その研究成果報告書を作成することが目標であった。ただし、レーダー探査については、糠塚古墳の前方部がどこまで東に延びるか、そして脇袋古墳群の3基の前方後円墳の埋葬施設の残存状況についての探査を実施した。 その結果、まず糠塚古墳の前方部端の推定位置は発掘調査成果とは齟齬があり、水路によってかく乱されてわからなくなっているが、水路の東には伸びないと判断された。 埋葬施設は、上ノ塚古墳では比較的浅い位置で墳丘主軸方向の南北8m、東西5mの矩形の埋葬施設の反応を捉えることができた。竪穴系の石室とみてよい。西塚古墳では、植え込みと墳丘が大きく崩れていることから成果が心配されたが、2m以上低いところで、北でやや西に振る石室の反応を探査範囲の南西でとらえることができた。天井石の形状もとらえている可能性もある。北側延長方向には若狭町の調査で渡り土手がみつかっている。糠塚古墳では、墳頂から数10㎝下がったところで南北4m、東西2mほどの異常を示す範囲がまとまってとらえられており、石室などの埋葬施設の反応と考えられた。 今述べた今年度の調査成果を含めて、『古墳における湛水状態の周濠内情報の収集に関する研究』を作成した。前半では、奈良県奈良市ウワナベ古墳、大阪府堺市ニサンザイ古墳、そして奈良県川西町島の山古墳のそれぞれの探査成果を用いて、墳丘本来の姿を復元するデータが得られているかどうかを確認した。後半では、トレンチ発掘の成果から墳丘の復元をそれぞれ試み、上ノ塚古墳ではほぼこれまで推定どおりの墳丘形態であること、糠塚古墳では西塚古墳に影響されて、墳丘の北の濠が狭く浅くなっていることが判明した。 最後に糠塚古墳の埴輪の分析を行い、若狭の中での埴輪の推移に関する新たな知見を得た。また、周濠の音波探査の有用性と問題点を指摘した。
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