研究課題/領域番号 |
19H01368
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
八木 浩司 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40292403)
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研究分担者 |
下岡 順直 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (10418783)
鄒 青穎 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40750055)
佐藤 浩 日本大学, 文理学部, 准教授 (60360468)
熊原 康博 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (60379857)
若井 明彦 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (90292622)
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高起伏衝突変動帯 / カトストロフィックな地形変化 / 地すべり地形分布図 / 土石流堆積物 / 高位地形面 / 年代測定 |
研究実績の概要 |
本研究では,ネパール_ヒマラヤ山麓部の小盆地・河谷を埋積する土石流堆積物を主体とした堆積段丘の編年を通して,この地域で発生してきたカタストロフィックな地形変化・地形発達のメカニズムを明らかにすることである. このため,2019年度は,セティ川から東部のマルシャンディ川,ブッディガンダキ川,トリスリ川に至る大ヒマラヤ山麓に発達する大規模地すべり地形のインベントリーマップを作成した.その結果,大規模地すべり地形には,大きな滑落崖を残すものの,移動体が滑落崖付近には残されていない,完全抜け落ち型のものが多く含まれることも明らかになった.それらの規模は数千万立方㍍であり,山体崩壊発生後急激に抜け落ちたデブリが下流側にもたらされたことを示している.また,大ヒマラヤ南側山麓部のマルシャンディ川流域・ゴルジュ区間において土石流段丘・土石流堆積物の分布状況を調査し,現河床から200m以上高い位置に於いても本流からもたらされた土石流堆積物を確認した,さらに採取した土石流堆積物中の炭質物質の年代測定を行い,3万年から数千年の間に何回もカタストロフィックな土石流が流下したことが明らかになってきた.同時に採取した宇宙線生成核種年代測定試料については計測準備中である.また,ネパール最大の湖沼であるララ湖においてその成因のひとつであるである堰き止め堆積物について宇宙線生成核種年代測定試料を採取した. 大ヒマラヤ北側のマルシャンディ川上流域の大規模堰き止め地形の痕跡をもとに,高精度DEMを使用して,予察的に堰き止め湖の決壊と土石流の流下数値実験を行った.その結果,発生した土石流の攻撃斜面に沿った駆け上り,下流側の支谷に逆流・遡上することが明らかとなった.これは,マルシャンディ川中流域における現河床から200-100m高い位置に変麻岩類を含む土石流性堆積物の起源を上流側に求めることの可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象地域とした大ヒマラヤ山麓部の南北30km,東西120km程度のエリアに対する空中写真判読を80%程度終了し,デジタル化も進めている.その結果,数千万立方㍍規模の地すべり地形を多数発見すると共に,土塊が完全に抜け落ちて下流側に流出したものがあることを明らかにした. マルシャンディ川流域では,土石流堆積物に係わる年代試料の集積も進め一部計測も終了している.他の地変によって形成されたと考えられる地点の年代測定試料も収集した. 高精度DEMを用いた地すべりダム湖の決壊とそれに伴う土石流の流下について予察的な数値実験で,土石流のかけ上がりや逆流を再現出来たことから,それらの下流側への長距離流下についての見通しを持つことが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響で海外での調査実施が見通せないことから,困難が予想されるが,引き続き空中写真判読とデジタル入力を進める.さらに,2019年度購入した高精度DEMを使用した地形解析,特に地すべり地形や段丘面を含めた3次元的配列を検討出来るようにしたい.さらに未測定の年代試料の計測を続ける.土石流の長距離流下に関しては,GPUの借用などの工夫をによって大ヒマラヤを挟んだ80km以上の区間に亘る数値シミュレーションを行い,下流側の低河床勾配区間にまで残される土石流段丘の形成について明らかにしていく.
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