2011年から実施している中部山岳地域における降水・土壌水・河川水・湖沼水・地下水・温泉水の同位体モニタリングを継続実施した。また、北海道屈斜路湖および群馬県丸沼周辺における降水・土壌水・河川水・湖沼水のモニタリングを新たに実施するとともに、福島県奥会津地域における湧水・温泉水の重点サンプリング調査を展開した。また、これまで個別に開発してきた地下水流動モデル・流出モデル・SVATモデル・湖沼水収支モデルといったサブモデルと静的降水アイソスケイプモデルとを結合させ、動的モデルのプロトタイプを構築する作業にも着手した。その際、SVATモデルに関しては不完全混合土壌浸透流にも適用可能なように可動水と不動水の分離・混合を試験的に導入したが、その検証は今後の取得データを用いて行う予定である。湖沼水収支モデルに関しては、流入河川水の蒸発濃縮および選択効果の補正が最も重要な因子であることが判明し、これを補正することにより熱・水収支の結果と整合する結果が得られた。湖底湧水に関しては、3次元地下水流動モデルとのカップリングを行い、今後その振る舞いを詳しく調査する予定である。簡略化された流出モデルによる「若い水」の混合率推定アルゴリズムに関しても検討を行い、土地条件(特に標高と都市化率)に対する依存性が高いことを確認した。このほか、温泉水の同位体データを用いて非天水成分の混合割合や生成メカニズムを推定するアルゴリズムを開発し、学会誌に投稿した論文が受理された。
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