研究課題/領域番号 |
19H01372
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50462205)
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研究分担者 |
田殿 武雄 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 主任研究開発員 (50553351)
井上 公 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 社会防災システム研究部門, 主幹研究員 (80450253)
小森 次郎 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 准教授 (10572422)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 岩石氷河 / 山岳永久凍土 / DInSAR解析 / GNSS測量 / 短命氷河湖 / 天山山脈 |
研究実績の概要 |
天山山脈北部地域のイリ山脈,クンゴイ山脈,テスケイ山脈において,岩石氷河の空間分布と氷河起源型岩石氷河の割合を調べた.最初に,岩石氷河特有の表面形態である畝溝構造,前衛斜面,厚い岩屑を持つ岩屑地形をSentinel-2やGoogleEarthを用いて抽出した.次に,2時期のALOS-2/PALSAR-2のマイクロ波データを干渉処理で位相差を変動量として捉える差分干渉SAR(DInSAR)解析を実施した. DInSAR解析の結果を検証するため,クンゴイ山脈のチョン・アクスウ谷の岩石氷河上で2016年,2017年,2019年に測定したGNSSS測量と,ドローン空撮から作成したオルソ画像のピクセルマッチング解析により水平移動量を算出した.DInSAR解析の結果と比較したところ,GNSS測量による移動量と一致し,マッチング解析の解析による移動の空間分布も一致した. 次に,イリ山脈,クンゴイ山脈,テスケイ山脈において,DInSAR解析により,永久凍土あるいは氷河氷を含む岩石氷河を抽出し,氷河起源型と崖錐起源型に分類した.3つの山脈では南北による標高差が共通してみられたのに対して,氷河末端と岩石氷河の下限高度は山脈により違いがみられた. また,現地調査として,キルギス山脈のアドギネ氷河前面の氷河起源型岩石氷河において,GNSS測量,ドローン空撮,気温計・地温計と雨量計の設置をおこなった.ドローンで取得した空撮画像からオルソ画像と地形表層モデル(DSM)を作成した.2016年,2018年,2019年のオルソ画像のピクセルマッチング解析とDInSAR解析の結果を比較したところ,水平移動量がほぼ一致した.また,2年間の移動量は,DInSAR解析で1.9m,ピクセルマッチング解析で2mであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アドギネ氷河前面の氷河起源型岩石氷河において地中レーダー探査を実施したが,アンテナが測定中に壊れたため十分なデータを得ることができなかった.岩石氷河のデータベース作成が途中の段階である.
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今後の研究の推進方策 |
キルギス山脈のアドギネ氷河前面の氷河起源型岩石氷河において,内部構造を調べるため,中心周波数80~40MHzのアンテナを用いて地中レーダー探査を実施する.また,内部の氷河氷と永久凍土の分布とその割合を調べるため,昨年度に購入した電気探査による測定をおこなう.ドローン空撮,GNSS測量,気温・地温計・雨量計のデータを回収する.さらに調査地をもう一つ増やして,アドギネ氷河前面の氷河起源型岩石氷河と比較する. 衛星画像解析では,天山山脈北部地域において,衛星画像を用いてピクセルマッチング解析を行い,岩石氷河の水平移動量を広域で明らかにする.差分干渉SAR解析の結果と合わせて,水平移動量と垂直移動量を分類する.また,天山山脈北部地域の岩石氷河データベースを完成させ,岩石氷河の山脈ごとの空間分布特性を地形解析と決定木統計解析から明らかにする. 新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査ができない場合,衛星画像解析により岩石氷河のデータベース作成を完成させる.
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