研究課題/領域番号 |
19H01376
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠藤 邦彦 日本大学, 文理学部, 名誉教授 (70059781)
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研究分担者 |
中尾 有利子 日本大学, 文理学部, 准教授 (00373001)
竹村 貴人 日本大学, 文理学部, 教授 (30359591)
近藤 玲介 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (30409437)
須貝 俊彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90251321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 武蔵野台地 / 東京の地盤解析 / テフラ / 中・後期更新世 / 地形区分 / 主成分化学組成分析 / 阿多鳥浜テフラ / Tky-Ng1テフラ |
研究実績の概要 |
本研究において新たに設定提案された武蔵野台地の地形区分を基に,その各地形単位の地下地質情報などを整理し,さらに東京を中心とする首都圏各地域の地盤の解明を図るため,オールコアボーリングを実施した.前年度の武蔵野台地西部の三鷹市新川コア採取に続いて,武蔵野台地北東部の赤羽台地において2本目のコアを採取し,テフラの検出,分析や古環境の推定などの分析を進めた.同時に既存の土質ボーリングコアの活用を図った.大量のボーリングデータに基づく多数の地質断面図による地盤構造解析の検討を同時に進行させた.続いて武蔵野台地の豊島区におけるオールコアを採取する予定でいたが,感染症対策のため延期を余儀なくされ,予算の繰り越しにより,翌年度に3本目となる豊島区コアを採取した.当コアについても同様にテフラを検出し,各種分析を進めた.これまでに得たテフラは多数に上り,全ての対比には時間を要するが,24万年前に日本列島を広域に覆った阿多―鳥浜テフラ,約30万年前の高山-NG1テフラを発見できたことは,従来の東方限界である関東地方南西部を超える東京で初めてのことであり,更新世中期の中心的位置を占めるMIS7やMIS9の海進サイクルを抑える上でその意義は大きいものと思われる.テフラの認定が確定すれば,この議論がMIS11まで進む可能性も示唆される.有孔虫・貝形虫や珪藻に基づく古環境解析も適用可能であり,海進・海退の過程を検討できる見通しが立った.本研究の中-長期的な目標として掲げている,東京や関東地方の3次元による地盤構造の解析に明確な展望が拓けたものと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症対策のため,研究室・実験室の利用や研究者,研究補助者の活動が大きく制約を受けたが,繰り越しを含む様々な工夫を凝らした結果,何とか当初の目標を達することができた.テフラの分析,年代測定,古環境の解析など実験室での作業を伴うものは遅れ気味ながら,大筋としては目標を達成することができた. 主な成果として,新たに区分された各地形単位をボーリングデータによって確認することができたこと.多数のテフラを見出し,幾つかの既存研究で明らかにされたテフラとの対比に成功したこと.ルミネッセンス年代測定によって数値年代を得る見通しが立ったこと.テフラや年代値によって年代軸を備えたコア(基準コアとよぶ)を増やすことができたこと.基準コアを基準とするより確かな地下地質断面の理解が進んだこと.中期更新世の中でもMIS7,MIS9,場合によってはMIS11にまで踏み込んだ検討が可能になる見通しが得られたこと.などが挙げられる.この最後の項目は当初の目標をはるかに上回る成果であると言えるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
特に時間軸の設定に大きな役割を持つテフラの検出,分析に力を入れ,その対比のための基礎データの集積にも力を割いていく.ここまでの研究により,関東平野における中・後期更新世テフラに関する基礎情報を相当程度整えることができた.これは該当地域で見出したテフラを対比して,年代軸を把握していく上での大きな基礎となる.特に火山ガラスの主成分化学組成分析の有効性が確かめられたが,火山ガラスが風化しているケースも少なくないため,鉱物の屈折率特性を含む記載岩石学的特性の把握をさらに促進する必要がある.こうした基礎情報を持ったテフラデータベースの構築を進める必要がある.大量のボーリングデータの解析も,テフラ等に基づく時間軸を保有したボーリングデータ(基準ボーリング)の活用によって,その意味は飛躍的に大きくなる.従来蓄積の乏しかった中期更新世のテフラ対比の見込みが立ったので,さらに推進するとともにその活用を図る.
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備考 |
本研究の成果を基に、武蔵野台地の新たな地形区分の解説を図を交えて掲載した。
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