研究課題/領域番号 |
19H01381
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
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研究分担者 |
室井 研二 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20310013)
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80410851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然災害 / 復興 / 地域開発 / 災害リスク軽減 / 開発途上国 |
研究実績の概要 |
主として文献調査によって理論的・概念的研究を継続し、研究の枠組みを災害研究と開発研究の統合分野に位置づけた上で精緻化した。インドネシアの現地研究協力者とオンラインでの研究打合せを繰り返すとともに、既収集データや過去の質問紙調査を丹念に再整理し、衛星画像や統計地図を分析した。その結果、バンダアチェでは、2013年頃から顕在化した南東部郊外の非被災地におけるリボン状の商業地とミニ住宅開発地、2018年頃からの被災地における埋め立て中規模新規住宅地がその後それぞれ周辺部に拡大する傾向が看取された。市街地周辺部のこうした開発地では、質問紙調査によれば、洪水リスクの増大が近年危惧される傾向にあり、土地開発が災害リスクを埋め込まない傾向が示唆された。また、こうした新開地での人口増加とともに、8割以上の死亡率を記録した被災地でも、被災後15年ほどが経過し、地域人口がほぼ被災前の水準に戻りつつあることが確認された。バンダアチェでは、家族の再建を基盤に復興が進み、そのことが地域経済の活性化と周辺部からの人口流入を招来する一方で、他の途上国における都市脆弱性の再生産過程との比較から、こうした都市開発が必ずしも災害に強いまちづくりにつながらない側面が指摘された。さらなる比較のために、日本の東日本大震災被災地において質問紙調査をおこない、日本では、将来の防災を重視した復興政策が人口の減少と高齢化を招き、地域のまとまりは弛緩し、住民自治や地域活動は停滞するという、開発と防災のトレードオフの関係が指摘された。その他、インドネシアの土地開発にかかる法制度資料を蓄積し、低湿地開発にかかわる資料調査を継続した。以上の結果の一部は、インドネシアにおける国際会議で発表するとともに、日本内外の学術雑誌において論文発表をおこない、東日本大震災被災地における質問紙調査については報告書を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度当初より新型コロナウイルス感染症拡大のためインドネシアなどへの海外渡航が全くできなくなり、住民へのインタビュー調査を含む、フォローアップの現地調査を実施することができていない。オンラインによる現地研究協力者との議論、衛星画像や統計データの分析などによって概略的な考察は十分に可能だったが、その検証に課題を残している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画に従い、昨年度概略的に考察した知見について、可能な限り現地調査をおこない、住民へのインタビュー調査や質問紙調査を実施し、詳細に検証する計画を立てている。ただし、主フィールドであるインドネシアの状況が不透明な上に、日本政府の新型コロナ感染症対策が急に大幅に変更になる可能性は否定できない。また、一般住民へのオンライン・インタビューも、あまり一般的ではない。やや不十分ではあるものの、複数の現地研究協力者とのオンライン・ミーティングを頻繁に実施して研究打合せを密におこない、それらの協力も得ながら質問紙調査を実施する体制を整えたいと考えている。
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