研究課題/領域番号 |
19H01399
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
丹羽 典生 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (60510146)
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研究分担者 |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70323219)
渡辺 文 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (30714191)
小林 誠 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (10771826)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 少数民族 / レジリエンス / オセアニア |
研究実績の概要 |
2020年12月12日にオンライン開催の形式で、科研のメンバーによる研究会を行った。これまでのフィール及び文献調査を通じて、フィジーの少数民族のうちメラネシア系、ツバル系の移民の歴史資料の整理と現時点の民族誌的情報についての発表会を開き、先行研究についての情報共有と現状の把握を行った。前者「<複数のアイデンティティを潜在的に抱えた集合体>の民族誌 ――フィジー・レヴカの少数民族の事例から考える」においては、メラネシア系のなかでもフィジーの旧都レヴカに居住している人々を扱った。それまで先行研究の乏しい同民族の離島における移転経路とその経緯及び現況について、予備的な報告を行っている。ヨーロッパ系、メラネシア系、先住系などの多民族との混血のすすむなかで、アイデンティティとしてはメラネシア系という枠を残しながらも、潜在的には複数のアイデンティティを重ね持ち、多層的な現実を生きている様が分析された。後者「「約束の地」での不安――フィジー・キオア島の土地をめぐる歴史と現在」は、フィジーの離島キオアに居住するツバル系が、フィジーの中でキオア人としての自己形成している様を、彼らの定着に至る複雑な歴史的経緯とフィールド調査によって明らかにした予備的報告である。来島記念の儀式のありようなど興味深い民族誌的事実を拾い出している。またオンライン開催という限定された形であれ日本オセアニア学会に参加して地域研究の最新成果の習得と研究者相互の情報交換を行った。 刊行された業績としては、梅崎昌裕・風間計博(編)『オセアニアで学ぶ人類学』昭和堂がある。同書には、本プロジェクトのメンバー全員が寄稿しており(「序章」「植民地」「環境問題」「芸術」の章)、人類学と地域研究の交差する領域を扱うという意味で関わりのある論考を掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度においては、新型コロナ感染症の世界的拡大の影響を受けて、研究会の開催から海外調査まであらゆることが手探りで進められた。研究会の開催については、オンラインで行い情報共有を行うことが可能となった。 一方で調査研究については、やや遅れていると判断した。最大の理由は本プロジェクトにおいて計画していた海外調査が新型コロナ感染症の拡大の影響のため遂行できなかったことにある。そのため本プロジェクトで予定していた現在の民族誌的状況に関する詳細なデータの収集は達成できていない。 そのかわりプロジェクトのメンバーは、これまでの研究において収集してきた画像資料や研究文献やアーカイブズ資料の整理・精査と共有を精力的に進めている。これらの情報を生かしたかたちで可能な範囲で、研究と成果公開を進めることで対応している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の拡大にともない海外調査が難しくなっている点については、関連調査地域の状況を視野に入れつつ、可能な範囲で行っていく。たとえば調査地や関連資料の収集されている研究機関・図書館や古文書館などをみすえて、いずれかの場所にて渡航と調査の遂行が困難でないと判断された場合には、海外調査を敢行する。 ただし現状を勘案するとそれでも一定の困難があると思われる。その場合は、関連した最新の研究書や論考から過去の民族誌的情報までの収集・閲覧を進める。また科研のメンバーのあいだで、これまで各自が集積してきた民族誌や文書データの整理とデジタル化を積極的にすすめ、それらを共有することを通じて、研究を進めていくこととする。
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