研究課題/領域番号 |
19H01403
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00233510)
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研究分担者 |
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 専任教授 (70330008)
徐 行 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (30580005)
郭 薇 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (80733089)
山本 龍彦 慶應義塾大学, 大学院法務研究科(三田), 教授 (90440370)
町村 泰貴 成城大学, 法学部, 教授 (60199726)
池田 公博 京都大学, 大学院法学研究科, 教授 (70302643)
米田 雅宏 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00377376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相互監視 / 分散的制裁 / 炎上 / インターネット / 表現の自由 / プロバイダ責任 |
研究実績の概要 |
コロナ禍による出入国制限で長く延期していた海外調査をようやく行うことができた。すなわち、2023年3月26日~30日にかけて、尾崎が台湾を訪問し、法官学院、Taiwan Internet Governance Forum、Institution of Watch Internet Network、輔仁大学法学部林家暘助教授、児童福祉連盟、中央研究院民族学研究所容邵武研究員を相次いで訪問し、台湾のネット・ガバナンスにおける「炎上」対策、人権問題対応、プロバイダ責任法立法論議について詳細な聴き取りを行った。北海道大学法学研究科の博士課程院生渡口紘子と北海道大学メディア・コミュニケーション研究院の許仁碩助教が同行し記録と通訳を行った。 調査の結果、インターネットの先進的な利用で知られる台湾でも、ネットいじめ、人権侵害が深刻であることがわかった。他方で、プロバイダ責任(制限)法の導入をめぐって、政府による言論への介入の正当化につながるという強力な批判による激しい論争が2022年にあり、国会提出前に廃案となっていた。現時点ではTWIGFのような民間団体が、政府の補助金を得て、ネット上のフェイクニュースや問題発言の削除をプロバイダ等に「要請」するという事業を行っているとのことである。私人による多様な発言を表現の自由により守ることと、それらに付随して発生する人権侵害への対応の根拠と範囲について、法的に明快な線引きをすることが難しく、法律家の間でも見解の一致を見ていないことが分かった。とりわけ私人による相互監視と分散的制裁については法の範囲外ではないかというコメントもあり、法的制御の根源的困難さが確認できた。これは、日本法におけるITやAI技術の活用の進展がもたらす社会的影響について本研究の法枠組班が行った分析結果と平仄が合っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
延期していた海外調査を本年度末にようやく行うことができた。その成果のメンバー間の共有と詳細な分析は令和5年度に行うことになる。 度重なる新型コロナウイルスの流行により延期となっていた海外調査については、日本出入国に関する水際対策や行動制限が緩和されつつあった2022年夏頃から中国語話者であるメンバーが台湾の各機関と連絡をとって準備を進めていたが、日台両国における出入国制限の問題などがほぼなくなった2023年3月末にようやく実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初は令和4年度を最終年度として研究成果の取り纏めを行う予定であったが、コーパスのデータクリーニング作業の遅れにより全体の進行に影響が出たため、繰越申請を行い、令和5年度まで研究期間を延長することになった。 海外調査の成果の取り纏めとメンバー間の共有のための研究会の開催を令和5年度早々に行い、プロジェクト全体の取り纏めに着手する。
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備考 |
山本龍彦「刺激競争が覆い尽くさぬ世に」朝日新聞2020年12月15日朝刊、山本龍彦「コロナとビッグデータ」神奈川新聞2020年7月4日朝刊、山本龍彦「報道倫理、時代に追いついて」朝日新聞2020年6月16日朝刊、山本龍彦「プラットフォーマーと消費者(下) 「デジタル封建制」統制を」日本経済新聞2020年1月29日朝刊
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