研究課題/領域番号 |
19H01405
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金子 由芳 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (10291981)
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研究分担者 |
川畑 康治 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (10273806)
栗田 誠 白鴎大学, 法学部, 教授 (20334162)
飯 考行 専修大学, 法学部, 教授 (40367016)
大川 謙蔵 摂南大学, 法学部, 准教授 (40582771)
川嶋 四郎 同志社大学, 法学部, 教授 (70195080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 法整備支援 / アセアン諸国法 / 比較法 / 経済法制改革 / 市場経済化 |
研究実績の概要 |
本研究は、アセアン後発諸国の市場経済化に伴う経済法制改革の検証を目的とし、各国の制度設計の相違を変数として社会経済的影響を分析することにより、改 革の功罪を検証し、法整備支援の在り方につき提言を引き出すことを意図するものである。 2019年度は3年間の研究計画の初年度であり、次年度に予定する本調査に備えた準備段階として現地出張調査を予定した。このうち2020年2~3月にかけて予定していたミャンマー現地調査が、新型コロナ禍の影響を受け中止を余儀なくされたため、これに該当する2019年度予算を繰り越し、2020年度中に当該ミャンマー現地調査を実施することを予定した。しかしながら2020年度中にもミャンマー側のコロナ禍の感染状況は悪化の一途を辿った。なお2021年2月の軍事クーデター以降は、政治的にもミャンマー渡航は困難な状況となっている。以上の状況に鑑み、日本側の研究班による現地調査を断念し、代わって、現地の研究協力先であるダゴン大学法学部の法学部長Mi Khine Saw Aung教授を中心とする研究チームに調査を委嘱し、報告書の執筆と関連資料の提出を受け、これに基づき日本側の研究班で研究会合を重ねた結果、以下の研究成果を得た。 司法改革の動向、また日本ODAによる法整備支援も関与する調停制度等の代替的紛争解決制度の整備動向について最新の状況を確認し、課題点を抽出した。 農地法をめぐる権原確定制度や土地収用をめぐる紛争動向を研究し、当面の成果を受けた洋書公刊の準備を進めた。 2020年倒産法、2015年競争法、2019年知的財産権法など最近登場した経済法制の制度設計の特色と実施状況を調査し、課題点を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により海外渡航による現地調査はままならないが、これを補って余りある水準で、対象諸国の現地研究協力先との緊密な協力連携を強化している。とくにカンボジア司法省、ラオス国立経済研究所、ミャンマー・ダゴン大学法学部、ベトナム・ホーチミン経済法科大学法学部、インドネシア・ランプン大学法学部、タイ・タマサート大学法学部との研究連携を強化し、各地で若手研究者を交えた調査チームを立ち上げてもらい、2020年度中に報告書および関連資料の提出を受け、またオンライン方式での研究会合を重ねており、研究成果の進捗はほぼ予定通りのペースで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度以降も新型コロナ感染症の国際的蔓延状況の急速な好転は期待しにくいなか、引き続き現地渡航がままならない状況が当面続くことも予想される。そのため、前年度以上に、現地研究協力先との連携を強めるべく、オンライン方式の研究会合を重ね、本調査の実施を進める。また国際シンポジウム形式での発信や、国際共著の準備を行う。 なかでも本調査の重点領域の一は法の実施基盤である紛争解決制度であり、司法制度(裁判・執行)の効率性や質的側面を独自の質問票やケース分析を加味しつつ評価するとともに、近年のドナー支援を受けて対象各国で導入の進む「調停」制度の異同に着眼し、司法代替効果と課題の検証を意図する。 また日本ODAによる民法典起草支援でも論争の起こった土地法分野への注目を続け、絶対的所有権構成(トーレンズ式登記)、調整的な所有権構成(農地委員会の自主管理等)、制限物権構成(永小作権・地上権)、国家による公法上の譲許構成(土地使用権・耕作権)等の異同を分類のうえ、現実の土地利用者保護の社会的要請、ドナーの推進する土地取引促進など相異なる政策的要請への寄与度をみる。 倒産法・会社法・担保法等の関わる金融法制分野であり、世界銀行等の推進する経済危機対応型のモデル法の採否を軸に制度設計を分類のうえ、中小企業金融促進効果等について評価する。 またアセアン経済共同体(AEC)を通じた統合化が進む競争法や知的財産権法などの経済法制分野である。AECによるガイドライン等を軸に制度設計を分類のうえ、各国法の実施状況・社会的受容を検証する。 当面の成果をALSA (Asian Law & Society Association等の国際学会の場で報告し、また現地側研究協力者とともに学術書の出版を準備する。
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