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2020 年度 実績報告書

中国の権威主義体制下における法の役割と限界についての比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H01407
研究機関明治大学

研究代表者

鈴木 賢  明治大学, 法学部, 専任教授 (80226505)

研究分担者 清末 愛砂  室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (00432427)
宮畑 加奈子  広島経済大学, 教養教育部, 教授 (20441503)
徐 行  北海道大学, 法学研究科, 准教授 (30580005)
櫻井 次郎  神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (40362222)
宇田川 幸則  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80298835)
岡 克彦  名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (90281774)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード中国法 / 権威主義体制 / 抑圧的法 / 民主化 / 台湾法 / 韓国法 / シンガポール法 / コロナ対策
研究実績の概要

新型コロナウイルスの世界的流行は権威主義体制のもとにおける法の使われ方の特徴を改めて現代に可視化させた。中国では法の内と外にその特徴を見ることができる。法の内側の特徴としては、民法典に現れた政治イデオロギー、パンデミックなどの緊急時における国との締約強制、家族法に復活した父権主義的規定、公益訴訟という名の独裁権力保持のための新たな制度など枚挙にいとまがない。しかし、より特徴的なのは法をまったく媒介としないさまざま強力な強制措置の発動である。中国のコロナ対策はいわゆる「ゼロコロナ」と呼ばれるもので、徹底的なロックダウン、禁足令、ローラー作戦的PCR検査、野戦病院への強制収容を特徴とする。これらの強制措置はほとんど法的根拠を背景とせず、それを問題にしようとする言論はすぐさま消去され、事後的にも法的に問題化する余地のないものであった。まさに文化大革命時の「無法無天」の再来を思わせるものであった。
権威主義体制から民主化をとげた韓国、台湾、そしてそれとは一線を画すシンガポールでも、権威主義時代の痕跡がコロナ対策にもみられなかったかが検証されるべきである。例えば、台湾は2022年の初めまでは徹底した水際対策により世界的にも異例に少ない感染者と死者数でコロナ対策に成功した国に数えられる。しかし、そこで援用された方法は違反者に対する厳しい罰金をおもな手段としており、非常時であり、法的根拠にもとづくものであったとしても、その手法には権威主義時代の痕跡を見ることができる。しかも国民的にはこのような手法に対する支持が高い。詳細な比較研究は今後の課題である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

なんと言ってもパンデミックのおかげで全く海外調査ができず、さらに外国からの研究者、実務家の招聘ができないことは、この研究にとってはきわめて痛手となっている。来年度は最終年度にあたるが、外国出張が可能になれば、補充的に調査を行うことを予定する。
しかしながら、逆にコロナウイルスの大流行、そしてそれに対する各国政府の対応は、この研究に格好の観察視点を与えてくれてもいる。まだ何が行われてきたのか全容を整理するには時間を要するが、この研究の最終的成果のなかにもコロナ対策の比較法を盛り込みたいと考えている。
このようにパンデミックにより障害を受けつつも、それを挽回すべく努力をしているところである。

今後の研究の推進方策

最終年度は海外出張が可能となった時点から海外調査を行い、これまでできていなかった現地での調査、聞き取り、情報収集を行う。また、その際にはそれぞれの国で行われたコロナ対策がいかなる法的枠組みのなかで展開されたかも重要な内容として取り込むこととする。
本研究のとりまとめを目指して公開で成果報告のシンポジウムを対面とオンラインの併用で開催する。代表者、分担者がそれぞれの国における権威主義体制と法の関係をコロナ対策を織り込みつつ、発表し、相互に比較し、それぞれの特徴とその規定要因の抽出を行う。その際、中国が他の国とはどように違っているか、なぜ違うのかについても議論を深めたい。
上記の活動をふまえて、最終成果としての論文執筆を進め、発表の準備を行う。最終年度の翌年には公表できるように準備を進める。

  • 研究成果

    (31件)

すべて 2022 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件) 図書 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 台湾におけるふたつの『移行期の正義』と法2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 82 ページ: 137-147

  • [雑誌論文] 台湾の新型コロナウイルス感染症対策―感染症法史と緊急命令権を中心として―2022

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 雑誌名

      日本政治法律研究第

      巻: 4 ページ: 343,357

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 比較法から吹く風は日本法を変えるのか--同性婚の法制化を例として2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 792 ページ: 20-26

  • [雑誌論文] 台湾の大法官による憲法解釈制度の概要と運用2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 雑誌名

      琉大法学

      巻: 104 ページ: 75-90

  • [雑誌論文] 究極的な差別としての死刑制度とフェミニズム-命をどうとらえるか2021

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 雑誌名

      福音と世界

      巻: 76-3 ページ: 30-35

  • [雑誌論文] 平和の達成要件としての<個人の尊厳>を学ぶ-室蘭での憲法教育・学習の試み2021

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 雑誌名

      月刊社会教育

      巻: 65-3 ページ: 12-19

  • [雑誌論文] 中国民法典における離婚冷静期に関する一考察2021

    • 著者名/発表者名
      宇田川幸則
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 289 ページ: 1-43

  • [雑誌論文] 中華人民共和国婚姻法(2001年)における実質的婚姻意思を欠く婚姻の取扱い2021

    • 著者名/発表者名
      宇田川幸則
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 292 ページ: 1-25

  • [雑誌論文] 『憲法二四条同性婚違憲論』に完全終止符を打つ2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 雑誌名

      Over

      巻: 3 ページ: 6,17

  • [雑誌論文] 「死にゆく『一国二制度』――香港で何が起きているか2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 雑誌名

      法と民主主義

      巻: 562 ページ: 3,6

  • [雑誌論文] 台湾有形文化資産における文化的価値創造の過程について2021

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 雑誌名

      地域文化研究

      巻: 21 ページ: 74,95

  • [雑誌論文] 堕胎罪に着目して考える日本国憲法の課題-ジェンダーと平和主義の視点から2021

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 雑誌名

      憲法運動

      巻: 2021-8 ページ: 6,13

  • [雑誌論文] 韓国ソウル中央地方法院・第一次日本軍慰安婦問題損害賠償事件(ソウル中央地方法院2021年1月8日判決)2021

    • 著者名/発表者名
      岡克彦
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 219 ページ: 121,159

  • [雑誌論文] シンガポールにおけるDVの再加害を防止するための法政策-義務的カウンセリングプログラムの実施2020

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 雑誌名

      亜細亜女性法学

      巻: 23 ページ: 159,170

    • 査読あり
  • [学会発表] 書評:小森田秋夫『法廷から見た人と社会―ロシア・ポーランド・韓国・ベトナム』2022

    • 著者名/発表者名
      徐行
    • 学会等名
      民主主義科学者協会法律部会
  • [学会発表] シンガポールのDV加害者対応としての刑事罰-女性憲章に着目して2021

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 学会等名
      日本司法福祉学会
  • [学会発表] 憲法24条2項に定める「個人の尊厳」を立法に活かす意義2021

    • 著者名/発表者名
      清末愛砂
    • 学会等名
      ジェンダー法学会
  • [学会発表] 東アジアにおける薬物政策2021

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 学会等名
      日本政治法律学会
  • [学会発表] 台湾有形文化資産における文化的価値創造の過程について2021

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 学会等名
      地域文化学会定例研究会
  • [学会発表] 台湾の新型コロナウイルス感染症対策―感染症法の歴史と緊急命令権を中心として―2021

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 学会等名
      日本政治法律学会
  • [学会発表] 台湾における歴史的建造物と都市法制の交錯2021

    • 著者名/発表者名
      宮畑加奈子
    • 学会等名
      日本土地法学会中国支部研究会
  • [学会発表] A Case Study of Singapore's Efforts to Prevent Re-offending in DV cases2021

    • 著者名/発表者名
      Aisa Kiyosue
    • 学会等名
      Asian Women Law Institute International Conference 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] マイノリティ問題に現れた韓国の『積極司法』と憲法適合解釈のあり方-『良心的兵役拒否』・『トランスジェンダーによる性別変更』の事例を中心に2021

    • 著者名/発表者名
      岡克彦
    • 学会等名
      比較憲法研究会
  • [学会発表] 台湾における移行期の正義と人権回復の努力2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木賢
    • 学会等名
      比較法学会84回総会
  • [図書] 台湾同性婚法の誕生2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 賢
    • 総ページ数
      402
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      9784535526334
  • [図書] 新版アジア憲法集2021

    • 著者名/発表者名
      鮎京正訓、四本健二、浅野宜之編
    • 総ページ数
      1312
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750353135
  • [図書] 北海道で考える<平和>-歴史的視点から現代と未来を探る2021

    • 著者名/発表者名
      松本ますみ・清末愛砂編
    • 総ページ数
      164
    • 出版者
      法律文化社
  • [図書] 法律文化社2021

    • 著者名/発表者名
      志田陽子・榎澤幸広・中島宏・石川裕一郎編
    • 総ページ数
      176
    • 出版者
      映画で学ぶ憲法Ⅱ
  • [図書] アフガニスタンを知るための70章2021

    • 著者名/発表者名
      前田耕作・山内和也編
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      明石書店
  • [備考] 明治大学現代中国研究所

    • URL

      http://www.isc.meiji.ac.jp/~china/

  • [備考] 鈴木的亜洲法世界

    • URL

      https://www.suzuki-asian-law.com

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公開日: 2022-12-28  

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