研究課題/領域番号 |
19H01408
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
溜箭 将之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70323623)
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研究分担者 |
大林 啓吾 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70453694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 法の伝播 / 比較法 / 信託 / フィデューシャリー / 財産管理・財産承継 / 移民政策 / 司法審査 / パブリックフォーラム |
研究実績の概要 |
国際的な法規範の形成・伝播・変容という大きな枠組みの中で、研究代表者と分担者でそれぞれの比較法と憲法の分野の特徴を生かしつつ、調査研究・成果発表の両面で協働してきた。主な成果が、2019年6月の日米法学会のシンポジウム報告「トランプ大統領と法の支配――トラベル・バンと差止命令を巡って」を収録した『アメリカ法』2019-2号のシンポジウム特集(2020年)である。研究代表者はこのシンポジウムの企画・運営・司会を務め、分担者はこのシンポジウムにおいて移民政策について司法審査の観点から報告を行った。 研究代表者は、信託を含めた財産承継の比較法について研究を進め、国内で「信託と遺留分の相克は解けないか――一英米法研究者の思考実験」立教法学101号(2020年)、海外でJapanese Wealth Management and the Transformation of the Law of Trusts and Succession,Trust Law International, vol. 33, pp. 147-162 (2019)といった成果報告を行った。さらに会社と非営利団体を含む法人の信認義務についても、調査研究と成果報告を進めている。 分担者は、移民政策などにおける司法審査につき、その動機に着目したアメリカのアプローチを「敵意の法理」千葉大学法学論集33巻3・4号1-52頁(2019年)において分析した。また、フェイスブックという世界的につながりをもてる表現フォーラムに政府が参加する場合に憲法上どのような位置づけとなるのかについて、「政府が開設したフェイスブックページはパブリックフォーラムに当たるとし、その批判者をブロックすることは観点差別であって表現の自由を侵害するとした事例ーーデイビソン判決」判例時報2399号117-118頁(2019年)において判例分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの流行により、2019年度後半以降、海外出張を伴う調査研究・成果報告が困難となり、進捗にも一部で困難に直面した。 他方で、新型コロナウイルスという世界的な危機は、本研究で取り組むべき新たな課題を提起した面もあり、その意味で本科研費に基づく研究は、当初想定した以上の広がりを得つつ進行しつつある。Zoomを利用した国内外の研究者との交流も広げつつあり、その意味で全体としては、おおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国境を超えた法の相互作用や、それによる国際的な法規範や法秩序の形成・変容の過程を動態的に分析することをめざし、1.国際的な資産の管理と承継、2.法人のガバナンス、3.非営利セクター、4.多様化する家族と個人の尊厳、5.選挙資金規正(選挙権・選挙制度を含む)、6.国境を超えた裁判、といった法領域を設定し、そこで比較法研究者である研究代表者と実定法研究者である研究分担者で協働しつつ、法分野横断的な比較法・法の動態分析を行ってゆく。こうした分析を通じて、日本法を<国境を超えた法のダイナミックな変容の中にどう位置付けるか>、そして<日本法の立場から国家を超えた法秩序の形成にいかに貢献できるか>を問うてゆくとともに、そうした問題意識を積極的に国際的に発信してゆく。
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