研究課題/領域番号 |
19H01408
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
溜箭 将之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70323623)
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研究分担者 |
大林 啓吾 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70453694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 法の伝播 / 信託 / フィデューシャリー / 財産管理・財産承継 / コロナ感染症 / 移民政策 / 司法審査 |
研究実績の概要 |
2019年度に引き続き、2020年度も、国際的な法規範の形成・伝播・変容という大きな枠組みの中で、研究代表者と分担者でそれぞれの比較法と憲法の分野の特徴を生かしつつ、調査研究・成果発表の両面で協働してきた。 主な成果が、分担者が編者となった書籍『感染症と憲法』であり、代表者も一章を執筆している。コロナ蔓延の中、タイムリーに研究成果を世に問うことができた。また代表者と分担者が以前から協働してきた成果として、代表者と分担者が共同で開催したシンポジウム「トランプ大統領と法の支配――トラベル・バンと差止命令を巡って」の模様が雑誌『アメリカ法』で公表され、分担者が編者となり代表者も一章執筆した『アメリカ憲法の群像――裁判官編』も公刊された。 代表者は、信託の世界的伝播を中心に研究を進め、2020年度末に上海交通大学法学院の主催でオンラインで開かれたシンポジウムで「Trust Law's Transnational Evolution: The Nature of the Beneficiary’s Interest」と題する報告を行い、一定の反響を得た。信託と深く関係する財産承継についての日米比較「アメリカにおける財産承継の動態――統一遺産管理法典と検認対象外財産承継」も道垣内弘人編『各国における遺言執行の理論と実態』所収で公表した。 分担者は、代表者が主に進めている信託分野の研究につき、公法学の観点からこれを分析する信託的立憲主義に照射し、アメリカにおけるこの議論が日本により適合するのではないか、そしてそれは憲法前文の「信託」に表れているのではないかという考察を行った。また、日米に共通する現象として、日本の統治行為論もアメリカの政治問題の法理も近年用いられなくなっている状況を踏まえつつ、久しぶりに政治問題の法理を適用したルチョ判決を取り上げ、判例分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症の蔓延の影響は意外に大きく、海外の研究者との交流や成果報告を中心に遅れが生じた。2020年度の科研費は2年度にわたって繰り越しを余儀なくされ、海外と関係する研究プロジェクトでは2年以上の後ろ倒しを余儀なくされたものもある。 しかし、2019年度から進めてきた信託や憲法の分野、加えて感染症に関係する研究は順調に進めることができ、繰り越しが認められたお陰で、公益法人など相対的に新しい課題も徐々に研究を進めることができてきた。また、文献や資料を読む時間もできたので、この間に資料読解や判例分析などをじっくり進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国境を超えた法の相互作用や、それによる国際的な法規範や法秩序の形成・変容の過程を動態的に分析することをめざし、1.国際的な資産の管理と承継、2.法人のガバナンス、3.非営利セクター、4.多様化する家族と個人の尊厳、5.選挙資金規正(選挙権・選挙制度を含む)、6.国境を超えた裁判、といった法領域を設定し、そこで比較法研究者である研究代表者と実定法研究者である研究分担者で協働しつつ、法分野横断的な比較法・法の動態分析を行ってゆく。こうした分析を通じて、日本法を<国境を超えた法のダイナミックな変容の中にどう位置付けるか>、そして<日本法の立場から国家を超えた法秩序の形成にいかに貢献できるか>を問うてゆくとともに、そうした問題意識を積極的に国際的に発信してゆく。コロナ禍においてもその対策をめぐって国境を超えた法の相互作用や日本から発信できるような法政策を垣間見ることができたので、こうした点も含め、上記課題に取り組んでいくことにする。
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