研究課題/領域番号 |
19H01408
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
溜箭 将之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70323623)
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研究分担者 |
大林 啓吾 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70453694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 法の伝播 / 憲法 / 信託法 / 信認法 / 民主過程 / 憲法と尊厳 |
研究実績の概要 |
代表者は英米とアジアを中心に信託、ESG投資、非営利法人のガバナンスの比較法、世界的法の変容の分析を行った。信託法については法人と相続との制度間競争という分析軸から日本法を世界的な信託法の伝播に位置付ける試みを行った。ESG投資については、神戸大学の行岡睦彦教授と共著で、会社のガバナンスや集合資産の投資とESG投資との間の緊張関係を縦軸に、日本の英米法・大陸法の混合法としての位置づけを横軸に、日本のESG投資の現状を比較・歴史的に検討した。非営利法人のガバナンスについては、日本における試みや議論を世界的なガバナンスの趨勢の中に位置づける研究を進め、海外でのワークショップ報告を通じて手ごたえを感じている。分担者は、アメリカを中心に民主過程の比較研究と尊厳の比較研究を行った。前者については、アメリカの選挙制度を再度確認しながら、投票権法に関する判例動向を考察したり、表現の自由の原理論が民主過程や社会にどのようにリンクするのかを検討した。とりわけ、エマソンの表現の自由原理は日本でも広く紹介されてきたが、そこで軽視されていた第4の原理の意味を再検討し、日本においてもこの原理を評価する必要があることを示した。ここでは、法原理の伝播が行われながらも、それが中途半端な形で終わってしまっている状況を明らかにする結果となった。また、尊厳については、日本の尊厳論がアメリカやドイツの影響を受けながら展開してきたことについて英語論文を刊行した。さらに、アメリカのプロセス理論が日本に与えた影響についてアメリカのシンポジウムで報告し、プロセス理論と日本の二重の基準論との親和性を確認し、理論上は日本に伝播しながらも、判例上はその影響についてなお検討が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ・ウィルス蔓延により、国際的な取り組みが阻害され、進捗の遅れを取り戻すのは容易ではなかった。しかし、科研費の支出の繰り越しを認めていただくことができ、この間に信託法とESG投資を含む信認法に関するワークショップ、また憲法の国際比較に関するシンポジウムの企画を進めることができ、これに向けた研究が大きく進展するとともに、成果の公表の場を準備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
代表者と分担者は、オーストラリア・サウスウェールズ大学のRosalind Dixon教授と東京大学Bryan Tiojanco准教授とともに、プロセス理論の比較研究のシンポジウムを企画し、これに向けた研究を進める。代表者は、アジア太平洋地域の信託法比較のシンポジウムをオーストラリア・メルボルン大学のYing Liew教授と共同し東京大学で開催する準備を進めるとともに、信認法の国境を越えた変容の論文を完成させ、ESG投資に関するワークショップ報告(ドイツ・ハンブルク)とその成果公表を進める。
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