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2019 年度 実績報告書

憲法秩序の領域分化をめぐる法的論証作法の日独比較

研究課題

研究課題/領域番号 19H01413
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

鈴木 秀美  慶應義塾大学, メディア・コミュニケーション研究所(三田), 教授 (50247475)

研究分担者 棟居 快行  専修大学, 法務研究科, 教授 (00114679)
松本 和彦  大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
毛利 透  京都大学, 法学研究科, 教授 (60219962)
三宅 雄彦  駒澤大学, 法学部, 教授 (60298099)
赤坂 幸一  九州大学, 法学研究院, 教授 (90362011)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードドイツ憲法 / 憲法判例
研究実績の概要

2019年度は研究会を3回開催した。6月の第1回では、4年間の研究の進め方について打ち合わせを行った。また、最新の憲法判例についても検討を加えた。
ドイツの研究者グループから、2019年9月に「憲法秩序の領域分化」という本研究のテーマについて、日独の研究者が参加する研究会(「日独憲法対話2019」)を開催したいとの申し出があり、それを第2回研究会と位置づけることにした。研究組織のメンバー(21人)は、第2回研究会で、憲法判例による「基準定立」がどのように個別の事案の解決に影響を及ぼしているのか、その端緒をつかむため、憲法規範に憲法上の原理原則を応用しているドイツの研究者(12人、連邦憲法裁判所裁判官1人を含む)との意見交換を行った。具体的には、民事法、環境法、刑事法、EU法など7つの個別テーマについて、報告とコメントを日独の研究者が行うかたちをとった。1日目(9/16)は、公開シンポジウム形式(4つのテーマ)とし研究組織のメンバー以外の参加も可能とした。2日目(9/17)は最高裁訪問(ドイツ研究者のための日本の違憲審査制についての説明や長官との面会)、3日目(9/18)は合宿形式(3つのテーマ)での集中討議を行った。日独の参加者が3日間、研究会、最高裁訪問、食事会などを通じて行動をともにすることで、研究課題についての問題意識を共有するだけでなく、憲法判例により各法領域においてどのように基準が定立されているかについての理解を深めることができた。なお、第2回研究会開催後、来日したドイツの研究者のうち2名が講師、研究代表者がコメンテーターとして、司法研修所における裁判官の研究会に招かれ、ドイツでは憲法が刑事法・民事法の解釈のための基準を定立していることを解説した。
2020年3月の第3回研究会でも、憲法と刑事法・民事法の関係にかかわる最新憲法判例について検討を加えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2019年度は、研究会の開催の他、研究組織のメンバーが個別に文献を通じて研究を行い、また、研究組織のメンバーの一部がドイツに出張することで現地調査を行うことを予定していた。ところが、9月にドイツから12人の研究者が来日し、3日間の研究会を行うことができたため、研究組織のメンバーは、研究課題についての問題意識を共有することができただけでなく、憲法判例による「基準定立」がどのように個別の事案の解決に影響を及ぼしているのか、理解を深めることができた。また、第1回と第3回の研究会において、研究組織のメンバーは、最新憲法判例についても検討を加えることができた。2019年度の研究成果は、研究組織のメンバーが個別に著書や論文を通じてすでに公表している。また、第2回研究会開催後、来日したドイツの研究者のうち2名が講師、研究代表者がコメンテーターとして、司法研修所における裁判官の研究会に招かれ、ドイツでは憲法が刑事法・民事法の解釈のための基準を定立していることを解説した。この研究会での講演や参加した裁判官との意見交換を通じて、本研究の問題意識や日本における日独比較研究のその時点の到達点を裁判官にむけても発表することができた。
なお、研究組織のメンバーのうち、研究分担者の三宅雄彦教授が、2019年7月末から8月、ゲッティンゲン大学にて資料収集や研究者(ショーコプフ教授ほか)との意見交換を行った。また、研究協力者の栗島智明准教授が、2020年2月、ミュンヘン大学やアウグスブルク大学などにて資料収集や研究者(アウグスブルク大カスパー教授など)との意見交換を行った。
これらの成果からみて、4年計画で行う予定の本研究は、2019年度については当初の計画以上に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

4年計画の本研究の2年目にあたる2020年度、3回の研究会を開催する(6月、11月、2021年1月に開催予定)。通算第4回目となる6月の研究会は、新型コロナウィルス感染防止のためZoomによる開催とする。研究代表者、研究分担者5人、研究協力者15人がZoomを用いて昨年度に行った研究成果について意見交換するとともに、今年度の研究の進め方について打ち合わせを行う。研究協力者15名の内訳は、石塚壮太郎(北九州市立大)、井上典之(神戸大)、大西楠・テア(専修大)、川又伸彦(埼玉大)、栗島智明(埼玉大)、小山剛(慶應義塾大)、實原隆志(福岡大)、高田篤(大阪大)、武市周作(東洋大学)、玉蟲由樹(日本大)、中西優美子(一橋大)、畑尻剛(中央大)、林知更(東京大)、松原光宏(中央大)、宮地基(明治学院大)である。
6月の研究会では、大阪大学の片桐直人教授をゲストに招いて、憲法と放送法の関係にかかわる憲法判例について報告していただく。11月と2021年1月の研究会においても、最新憲法判例を取り上げる。第6回研究会では、2021年度の研究の進め方も検討する。
この他、今年度の研究費の枠内で、研究組織のメンバー(8人を予定)は、2020年度後半の時期にドイツに出張し、専門家へのインタビューや文献調査を行う。訪問相手としては、ドイツの研究者や関係する行政機関などを予定している。イェシュテット教授、ポッシャー教授、マージング教授、レプシウス教授、シェーンベルガー教授、ヴァルトホフ教授、メラース教授、ルッフェルト教授、フォルクマン教授、ブリッツ教授、コルニルス教授、カイザー教授、ヴィスマン教授などから協力について承諾を得ている。
2021年度には、ドイツにおいて2019年と同様に日独の研究者が参加する研究会を開催する。2022年度は、4年間の研究成果を論文集として刊行することを目指す。

  • 研究成果

    (40件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (30件) (うちオープンアクセス 7件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (5件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] フライブルク大学/マックスプランク研究所フライブルク/フンボルト大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フライブルク大学/マックスプランク研究所フライブルク/フンボルト大学
    • 他の機関数
      6
  • [雑誌論文] 「忘れられる権利」と表現の自由・再論2020

    • 著者名/発表者名
      鈴木秀美
    • 雑誌名

      メディア・コミュニケーション

      巻: 80号 ページ: 1-18

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Die Bedeutung der Generationengerechtigkeit fuer das Verfassungsrecht2020

    • 著者名/発表者名
      Toru Mori
    • 雑誌名

      法学論叢

      巻: 186巻5・6号 ページ: 12-26

  • [雑誌論文] 辺野古環境影響評価手続やり直し義務確認等請求事件2020

    • 著者名/発表者名
      松本和彦
    • 雑誌名

      環境法研究

      巻: 10号 ページ: 263-272

  • [雑誌論文] 基本法上の日曜日及び祝日保護と主観的権利性2020

    • 著者名/発表者名
      武市周作
    • 雑誌名

      東洋法学

      巻: 63巻2号 ページ: 183-205

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書き割りの背後へ―日本憲法学と「法の自律性」に関する試論2020

    • 著者名/発表者名
      林知更
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 32号 ページ: 132-144

  • [雑誌論文] 歴史哲学の後でー憲法学における外国法の参照2020

    • 著者名/発表者名
      林知更
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 92巻4号 ページ: 6-13

  • [雑誌論文] ドイツの難民受け入れ政策にみられる新たな傾向 ―難民の社会統合による「危機」の克服?2020

    • 著者名/発表者名
      大西楠・テア
    • 雑誌名

      上智ヨーロッパ研究

      巻: 12号 ページ: 37-45

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ドイツにおける個人情報保護法制の構築2020

    • 著者名/発表者名
      大西楠・テア
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 81号 ページ: 183-189

  • [雑誌論文] マイナンバー制度と『自己情報コントロール権」2020

    • 著者名/発表者名
      實原隆志
    • 雑誌名

      福岡大学法学論叢

      巻: 64巻4号 ページ: 803 - 844

  • [雑誌論文] 法的視点からの「平和」の重要性―P. ヘーベルレ教授の『平和の文化』について―2020

    • 著者名/発表者名
      井上典之
    • 雑誌名

      神戸法学雑誌

      巻: 69巻4号 ページ: 97-110

  • [雑誌論文] Constitutionalism beyond National Borders as a Universal Value2020

    • 著者名/発表者名
      Noriyuki Inoue
    • 雑誌名

      Kobe University Law Review

      巻: No. 52 ページ: 167-176

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ドイツ連邦憲法裁判所2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木秀美
    • 雑誌名

      法曹時報

      巻: 71巻7号 ページ: 1-33

  • [雑誌論文] Wirkt in der Abwaegung wirklich das formelle Prinzip? Eine Kritik an der Deutung verfassungsgerichtlicher Entscheidungen durch Robert Alexy2019

    • 著者名/発表者名
      Toru Mori
    • 雑誌名

      Der Staat

      巻: 58 ページ: 555-573

  • [雑誌論文] 国民意識の変化と憲法解釈2019

    • 著者名/発表者名
      毛利透
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 91巻5号 ページ: 38-44

  • [雑誌論文] 基本法上の官吏ストライキの禁止と欧州人権条約2019

    • 著者名/発表者名
      三宅雄彦
    • 雑誌名

      自治研究

      巻: 95巻8号 ページ: 154-161

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 職業官僚制における地位と実体:官吏ストライキをめぐるドイツ基本法33条5項と欧州人権条約11条の衝突2019

    • 著者名/発表者名
      三宅雄彦
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 19巻1号 ページ: 23-67

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 古稀論集と学派対立:1959年シュミット包囲網とスメント2019

    • 著者名/発表者名
      三宅雄彦
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 19巻2号 ページ: 1-42

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 裁判所の判決提供義務とプレスの自由2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木秀美
    • 雑誌名

      自治研究

      巻: 95巻11号 ページ: 155-163

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 雇用及び職業における平等取扱い指令をめぐるEU法とドイツ法との関係と裁判所間の対話2019

    • 著者名/発表者名
      中西優美子
    • 雑誌名

      自治研究

      巻: 95巻7号 ページ: 99-109

  • [雑誌論文] PSPP決定をめぐるドイツ憲法裁判所とEU司法裁判所間の対話【EU法における先決裁定手続に関する研究(32)】2019

    • 著者名/発表者名
      中西優美子
    • 雑誌名

      自治研究

      巻: 95巻5号 ページ: 81-92

  • [雑誌論文] PSPP決定に関しEU司法裁判所に先決裁定を求める決定2019

    • 著者名/発表者名
      中西優美子
    • 雑誌名

      自治研究

      巻: 95巻5号 ページ: 133-143

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ドイツ連邦憲法裁判所における『憲法アイデンティティ』審査2019

    • 著者名/発表者名
      中西優美子
    • 雑誌名

      国際人権

      巻: 30号 ページ: 51-56

  • [雑誌論文] 公法解釈における諸原理・原則の対抗2019

    • 著者名/発表者名
      松本和彦
    • 雑誌名

      公法研究

      巻: 81号 ページ: 60-82

  • [雑誌論文] 政党本位・再考2019

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 雑誌名

      憲法研究

      巻: 5号 ページ: 49-59

  • [雑誌論文] 統治機構論探訪25〔最終回〕近代国家の三層モデル:ネットワーク国家2019

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 773号 ページ: 75-79

  • [雑誌論文] EUの移民規制2019

    • 著者名/発表者名
      大西楠・テア
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 91巻10号 ページ: 52-56

  • [雑誌論文] 戦後日本の民主主義において司法が果たした役割 ─ハレ大学シンポジウム『明治維新の遺産─民主主義への道(1868年~2018年) 』2019

    • 著者名/発表者名
      大西楠・テア
    • 雑誌名

      専修大学法学研究所紀要

      巻: 59号 ページ: 1-11

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「くじ引き」の合理性2019

    • 著者名/発表者名
      大西楠・テア
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 31号 ページ: 148-154

  • [雑誌論文] 『GPS捜査』の憲法上の問題-ドイツの議論との比較-2019

    • 著者名/発表者名
      實原隆志
    • 雑誌名

      福岡大学法学論叢

      巻: 64巻2号 ページ: 411 - 458

  • [雑誌論文] 憲法判例と憲法解釈―最高裁の憲法判断とその先例性―2019

    • 著者名/発表者名
      井上典之
    • 雑誌名

      公法研究81号

      巻: 81号 ページ: 1-28

  • [学会発表] 「縮小する社会」における民主政2019

    • 著者名/発表者名
      毛利透
    • 学会等名
      日本公法学会
  • [学会発表] 公的責務履行参加権としての環境権2019

    • 著者名/発表者名
      松本和彦
    • 学会等名
      環境情報科学・研究発表大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 公権力による情報収集活動における国内法・日本国憲法上の問題2019

    • 著者名/発表者名
      實原隆志
    • 学会等名
      国際人権法学会
  • [図書] 憲法の原理と解釈2020

    • 著者名/発表者名
      棟居 快行
    • 総ページ数
      580
    • 出版者
      信山社
    • ISBN
      9784797267907
  • [図書] 憲法の規範力と市民法2020

    • 著者名/発表者名
      ドイツ憲法判例研究会(編集代表:小山剛)
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      信山社
    • ISBN
      9784797212334
  • [図書] Verfassungsentwicklung II2019

    • 著者名/発表者名
      Matthias Jestaedt, Hidemi Suzuki (Hg.)
    • 総ページ数
      230
    • 出版者
      Mohr Siebeck
    • ISBN
      9783161589249
  • [図書] 比較憲法2019

    • 著者名/発表者名
      東 裕、玉蟲 由樹(編著)
    • 総ページ数
      250
    • 出版者
      弘文堂
    • ISBN
      9784335002410
  • [図書] 情報自己決定権と制約法理2019

    • 著者名/発表者名
      實原隆志
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      信山社
    • ISBN
      9784797267938
  • [学会・シンポジウム開催] 第2回「憲法秩序の領域分化をめぐる法的論証作法の日独比較」研究会 「憲法の発展Ⅲ―法律における憲法の発展(日独憲法対話2019)」2019

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公開日: 2021-01-27  

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